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第30話

「それなら、何で俺に佐々木をいじめるよう言ったんだ?」  宮本の話を聞いているかぎりじゃ、宮本がなぜ俺に佐々木をいじめるよう言ったのかわからない。 「んー、いじめを受けて困っている奈留の助けになれたら、奈留との距離が縮んで、仲良くなれるかなって。今までうまくいっていて、これから徐々に仲良くなろうと思っていたんだけどさ…」  宮本は言葉を途切らせて佐々木の頭を掴んだかと思うと、顔を横にずらし、佐々木の項を噛んだ。 「アヴッ…!」  痛かったのか佐々木が身悶える。 「この教室で奈留を見つけたとき、鈴村を犯そうとしてたんだよ」 「……マジかよ」 「これは憶測だけど、鈴村を犯して弱みを握りたかったんだと思うよ。レイプ写真を撮って、それを周りにばらすぞって脅したかったというのもあるし、…または、鈴村がΩだとどこからか情報を得て鈴村と番を成立し、その後、番を解消されたΩは世間からはじきものとして扱われるのをいいことにそれで脅そうとしていたかもしれない」  ゾワリ、と鳥肌が立った。  いつも暗そうな顔を俯かせていた佐々木がそんなことを思っていたのか、と衝撃が隠せないと同時にもしも宮本がこの場所に訪れないでいたら、佐々木に犯されていたかもしれないということに嫌悪感を抱かずにはいられなかった。 「俺はそんな奈留を見たら、カッと血が頭に上って、気づいたら奈留を金槌で殴って気絶させてた」  俺は自分の足元の傍に置かれていた金槌を見やった。  佐々木を殴ったという金槌は血がベッタリとこびりついている。多分、これは佐々木が持ってきたもので、俺を気絶させるのに用いたのだろう。 「それで、倒れた奈留を見て思ったんだ。奈留が誰かとセックスするくらいなら、俺が奈留と繋がって奈留をこの手に収めようって」  ここからでは宮本の顔は良く見えないが、自身の手を佐々木の顔に這わせて発せられた言葉は狂気じみていた。 「んで…、そいつを手に収めることはできたのかよ」 「それが、目が覚めた奈留は俺に沢山の汚い言葉を浴びせて来たよ。それでまた頭に血が上って、激しくしちゃったら、奈留が壊れたようにただ喘ぎ声を発する状態になっちゃった。まぁ、これはこれで可愛くて愛おしいんだけど」  冷笑気味に問いかけたが、宮本はまったく気にする様子はなく、佐々木を個の腕で抱きしめて緩やかだった腰の動きを速めた。 「あんん…!、あ、あ、あん!、あ…、んぅ…!」  佐々木も宮本の動きに合わせて体を揺さぶられ、いっそう激しい喘ぎ声をだす。 「お前、相当狂ってやがるな…」  こう皮肉を言っても、宮本には通じないだろう。しかし、俺はこの状況を見てそういわずにはいなれなかった。  絶頂が近いのか、宮本は腰を動かして個の肉棒を抜き差しするだけで何も言わなかった。しかし、何となく宮本は笑っているのではないかと感じた。  …厄介な奴につかまっちまったな、と思った。もとはといえば、佐々木が言った言葉が原因であるが、まさか、その言葉を宮本が聞いていて、こうなるとは思っていなかったに違いない。  俺は宮本の腕に抱かれた人間に小さく、ご愁傷様と呟いた。

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