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第10章 (1)

 ヴィンセントに「おいで」と手を差し伸べられて、莉音はバスルームに連れて行かれた。  一緒にシャワーを浴びるのははじめてのことで、けれども、全身をボディーソープまみれにしながらも、くまなくヴィンセントに触れられて、莉音は甘い吐息を漏らしつづけた。  向かい合って口づけを交わし、背中にまわされた手に優しく撫でられているうちに躰がとろけていく。下方へ滑り降りた手に、尻の狭間(はざま)を探って思わせぶりに秘花の(ふち)をなぞられると、それだけで鼓動が高鳴って、自分でもどうしようもないほど息が乱れた。 「はっ……ァ…あ……っ」  ゆるゆると撫でまわしていた指の腹が、やがてツプリと身体の内部に入りこんできて、莉音は眉を顰めるとヴィンセントの肩に縋った。 「硬い。離れているあいだ、自分でほぐしたりは?」  訊かれて、ヴィンセントの肩口に額を預け、羞恥に耳まで赤く染めながらかぶりを振った。 「してない、です。一度も。だって、そしたらアルフさんが、恋しくなっちゃう、から……」 「可愛いことを言う」  莉音の頭に手を添えたヴィンセントは、濡れた髪が張りつく額に愛しげに口づけた。 「では、じっくりほぐそう。時間をかけて、たっぷりと。莉音の躰が完全に開いて、私を気持ちよく受け入れられるように」  耳もとで囁かれて、莉音は目もとを赤らめた。  恥ずかしくて落とした視線が、そのままヴィンセントの下肢に吸い寄せられる。莉音は引き寄せられるように、ゆっくりと膝をついた。 「莉音?」  わずかに勃ちあがりはじめている雄茎に、両手で包むようにそっと触れる。そのまま顔を寄せ、躊躇(ためら)いがちに口に含んだ。 「……っ。莉音っ。おまえはそんなこと、しなくていい」 「やっ、したい」  手首を掴んで立ち上がらせようとするヴィンセントに、莉音は抗った。 「僕も、アルフさんに気持ちよくなってほしい。はじめてだから、下手かもしれないけど」  訴えるように言って、莉音はふたたび目の前の逞しい雄に口づけ、先端を口の中へと導き入れて舌先を絡ませた。  歯を立てないように頬張って舌と唇を動かし、吸ったり、舐めしゃぶったりする。ヴィンセントの雄は、たちまち隆起して口の中で硬くなり、容積を増した。それが嬉しくて、莉音はますます夢中になって奉仕した。  髪の中に差し入れられたヴィンセントの指が、莉音を褒めるように、上下する動きに合わせて掻き交ぜられる。こんなに太くて大きなものを、自分はこれまで受け入れてきたのだと莉音は恍惚となった。  シャワーの水音に交じって、莉音の口がたてる淫靡な音が浴室内に響く。ヴィンセントの吐き出すハッハッという荒い呼吸が莉音の官能をより刺激して、もっともっとと行為を駆り立てた。  自分の拙い舌使いに、ヴィンセントが感じてくれているのが嬉しくてたまらない。  ただひたすら無心に舌を這わせ、口をすぼめ、硬く、熱い(たか)ぶりが張りつめていくさまを陶然と感じつづけた。

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