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【番外編】初めてのハロウィンパーティー (3/3)

「訓志、支度するところも見せてくれなかったから、気になってたんだ……。ドレスの下は、どんな風になってるのかなって。下着も、いつもと違いそうだし」 「くすぐったいよ。ストッキングは、ガーターベルトで吊るしてるの」 「へえ……。これ?」 「はああっ……」  震える吐息に混じる声は、既に艶めかしさを帯びている。うっとりと身体をくねらせる訓志の姿をチラと確認し、勇樹は素早く訓志のスカートをめくった。彼がはいている下着は、ヒップがほぼ露出しているTバックだ。しかも、黒のレース。 (よし! これならイケる!!)  訓志の「ヤル気」を下着に見て取った勇樹は、内心ガッツポーズしながら瞬時にスカートを元に戻し、何食わぬ顔で愛撫を続ける。 「スリットから見え隠れする太腿が、すごく色っぽかったよ」  ピアスを避けて耳朶(みみたぶ)を軽く()み、太腿からヒップに、下着の線をなぞるように撫でる。 「大胆な下着だね。可愛いお尻が剥き出しだ」 「……だって、ドレスに線とか浮き出たら、台無しじゃん」  さすがに恥ずかしくなったのか、訓志は俯いた。 「うん。確かに下着の線は全く分からなかった。だから、何も履いてないのかと思って、ハラハラしたよ」  するりと、ヒップの間に手をくぐらせると、訓志の脚が震え始めた。それとなく――と言っても、気付かれているだろうが――訓志の中心に緩く触れると、そこはしっかり兆していた。 (どうしよう。めちゃくちゃ萌えるから、このまましたいけど……。やっぱり、この辺で、バスルームに連れて行ったほうが良いかな?)  一瞬の勇樹のためらいに、訓志は気付いた。 「……もう、準備してあるから、大丈夫」 「訓志……。最高だよ。俺、このまましたかったんだ」  脚が震えて立っているのが辛かったのか、恥ずかしいのか、訓志はキッチンのカウンターに縋りつき、顔を伏せている。耳が赤い。自分を求めてくれたことが嬉しくて、勇樹は素直に欲しいと口に出した。せっかくのドレスを汚したり皺にしたりしないよう、注意深く裾を持ち上げる。  跪き、優しくストッキングと素肌の境目に口付ける。ガーターベルトに沿って、次第に太腿を這い上がる。Tバックは、両手でそうっと引き下ろした。ストッキングとガーターベルトだけを纏い、下半身の中心部分を晒していることに、少し興奮しているのか、早くも訓志の呼吸は乱れている。  背後のすぼまりに口付ける。入口をノックするように優しく唇で叩くと、ぴくぴくと反応する。僅かに扉を開いたそこに、すかさず舌を差し入れて濡らす。 「……僕のバッグに、入ってる」 「うん」  何が、と聞き返さなくても、勇樹には伝わった。キッチンカウンターの上に投げ出されていた訓志のハンドバッグを開けると、コンドーム数枚と、旅行用の化粧品入れが転がり出てきた。これにローションを詰め替えたのか。容器から手のひらに液体を出すと、馴染みのある感触だった。 (なんだ、訓志、ヤル気満々じゃないか……)  ローションを指に纏わせて、訓志の内側へと潜らせる。そこは、ひどく柔らかい。今日のドレスアップにやたらと時間が掛かっていたのは、こういうことか。 「訓志、可愛いよ……」  きゅっと指を中で動かすと、訓志は身体をよじって悶え始めた。 「ぁあああっ……、そこっ……!」  切なげな声をあげて、訓志は、勇樹の指を締め付ける。上半身はフィットしたドレスは、ダンスで鍛えた、しなやかな身体の魅力を余すところなく表現している。  非日常的なシチュエーションに、勇樹もいつになく興奮していた。サスペンダーを外し、窮屈になっていたスラックスの前を寛げる。下着をずり下ろすと、既に十分昂っている彼自身と、訓志にそれぞれコンドームを被せ、自身には更にローションを擦りつけ、背後から訓志の後孔へと剛直を突き立てた。甘えるような喘ぎ声が、艶めかしい吐息と共に訓志の口からこぼれる。引き締まった腰を掴み、前後に揺すぶる。  抑え気味の二人の声がキッチンに響く。普段そういうことをする場所ではないことが、余計に二人を昂らせた。程なくして共に絶頂を迎えると、糸が切れた人形のように、訓志は崩れ落ちる。 「まずベッドに行って、ドレスを脱ごうか。それからお風呂な」  汗で額に張り付いたブロンドのウィッグをそっと剥がし、横抱きにして訓志を寝室に運ぶ。優しくベッドに横たえると、訓志は眉をきゅっとしかめ、シーツを掴んだ。 「……訓志?」  あまりにプレイに振り過ぎ、気を悪くしたのだろうか。少し不安になり、小声で呼び掛けた。 「僕、もう我慢できない!」  叫びながら起き上がった訓志は、ブロンドのウィッグを外して放り投げ、ドレスと下着を脱ぎ捨て、猛然と勇樹の服を脱がせにかかった。その目はネコ科の肉食獣のように光っている。 「勇樹のタキシード姿も、すっごくセクシーで、むしゃぶりつきたくて仕方なかったんだけどさ。女性のドレスアップって、動きづらいんだもん」  仰向けにベッドに押し倒した勇樹にのしかかり、驚いて縮こまっている彼の分身を吸い、あっという間に勃ちあがらせると、上に乗っかって自分から腰を振り出した。 「ああ……、情熱的な訓志も素敵だよ」  しばし扇情的な眺めを堪能した後、キッチンで遠慮しながらの攻めで不完全燃焼だった鬱憤(うっぷん)を晴らすべく、勇樹は体勢を逆転する。その後は互いにくんずほぐれつしつつ、新婚カップルは、いつもにも増して熱い夜を過ごしたのだった。 (……たまにはコスプレも良いかもしれないな)  内心、二人ともそう思っていたとは、互いに知る由もない。

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