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プロローグ

乾いた大地、降り注ぐ灼熱。息を吸えば肺が焼けるように痛み、喉は常に張り付いたように渇いていた。 食糧を探そうと乾き切った地面を爪で抉り、指が赤に染まったことは一度や二度じゃない。 生きるためならなんでもやった。何度も死んだ方がマシだと思った。 だけどできなかったから、俺は今生きている。 それなのに。 「は、なせ…っ!!触んな、やめろよ…!」 どうして、こんなことになる。 「ーーぁ"、っ…!!」 生きるためならなんでもやった。 盗むことも、騙すことも、誰かを傷つけることだって、なんでも。 「ひ、嫌だ、いやだいやだいやだ!!頼むから…っ」 どれだけ薄汚れてもいいと、そう、思ってたのに。 「いやだ……っ!」 死にたい。 俺は、何年振りかに心の底からそう思った。 ーー 生まれた環境を嘆いても仕方がない。それも運が無かったと開き直ってしまえば、人生というのは案外楽に生きていけるものだ。 妬み嫉みじゃ腹は膨れない、むしろどんどん腹が減る。 働かざるもの食うべからず、それは俺が生まれ育った環境ではガキの頃から叩き込まれる。立って喋れたらそいつはもう労働力、施しを受ける対象からは外れる。 有り得ないって?いや有り得ちゃうんだな、これが。 そういう世界もあるんだって、その綺麗なことしか詰まってないような頭に叩き込んどいてよ。 生まれた環境はもちろん、もう一つ厄介な事がある。 それは性別だ。 人生イージーモードなのがα、ノーマルモードなのがβ、ハードモードがΩ。ただしΩは生まれた環境によって色々モードが変わる。 スラム街出身のΩなんて目も当てられないよ。マジご愁傷様って感じ。 体は弱いし筋肉は付きにくいし頭だってあんまり良くない。これで超ド級の美人だってんなら話はまた違うんだろうけど、そんなうまくは行かない訳で。 何が言いたいかって言うと、俺がそのスラム出身の全てにおいてちょっと劣るΩだって事ね。 人生ハードモード過ぎて逆に笑うしかないよねって感じなんだけどさ、こう言う性格だからそれなりに楽しく生きてんの。 そりゃあ国を統治してる王族とか権力者とか反吐が出るほど嫌いだけど、そんなの俺には関係ないって話。雲の上の人の話したって、これもまたしょうがない。 ボロ布みたいな服を着て、お偉いさん方にゴマを擦って靴とか磨いてその日を生きる。それである程度金が貯まったらこんな国を出て自由に暮らすって、そんな夢があったんだけどな。 ホント、権力者って嫌い。

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