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第3話・それでも大好きなあの人。(3)

 街灯がカチカチと音を鳴らし、短い点滅を繰り返して夜道を照らしている。  その街灯はまるで、芽生え始めた恐怖心を煽ってくるみたいだ……。 「ね、君。可愛いよね」  突然声をかけられ、ハッとして振り向けば、すぐそこには見知らぬ男の人がいた。  薄暗い街灯だから、顔立ちとか髪の毛の色までは分からない。  だけど背はぼくよりもの頭ひとつ分はある。  肩幅もがっしりしてるし、きっと大学生だ。  なんとなく怖くなって逃げようとすれば、すぐに腕を掴まれた。 「いやっ! はなしてっ!!」 「逃げないでよ。よくココを通るでしょ? ずっと見てたんだ」 「……っつ!」  背後から腕を回され、シャツの裾から手が侵入してきた。  冷たい手がぼくのお腹や腕を撫で回す。  虫が這うような感覚がして、とても気持ち悪い。 「いや、はな、して……」  身体に回された腕から逃れるため、手を引っ張っても外れない。  力いっぱい身体を(よじ)っているのに、男の人はびくともしない。

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