20 / 23
第19.5話 初めての夜に【岳秋】
夜中に、ふと目を覚ました。
白いシーツの谷間に浮かぶ春樹の肌は滑らかで、月明かりに照らされ、乳白色に輝いている。鼻の頭にうっすらと浮かぶ汗は、夏の暑さのせいか。それとも昨夜の抱擁の名残か。自分の腕の中で、切なげに身体を震わせて感じ入っていた春樹の姿を思い出し、岳秋の胸に熾火 のように熱が蘇る。
未成年で真っさらの彼に、保護者の自分が手を出すなんて……と、心に鍵を掛けてきたはずだった。しかし、互いを求める気持ちの強さに、まるで濁流に押し流されるように、昨日初めて彼を抱いた。途中までは、怖がらせまい、痛くするまいと自分を制御していたが、その白い肌が赤らみ、目がうっとりと潤む艶めかしい姿態に、箍 が外れた。優しくしたかったが、つい、激しくしすぎたのではないか。事の後に不安になったが、春樹の寝息はすやすやと健やかで、寝顔も穏やかだ。改めて、くすぐったいような歓びが湧いてくる。愛する人と肌を重ね、身体を繋げるのは、こういう幸せだった。岳秋にとっては、久しぶりの感覚だった。
岳秋の妻、春樹の姉だった夏実を突然の事故で亡くしてから、義兄弟として、二人は慰め合い助け合って悲しみを乗り越えてきた。トラウマで夜うなされるようになった春樹と一緒に眠るようになったのも、その一環だった。寝ながら無意識に身体を擦り付け、足を絡めてくるのは、その頃からの春樹の癖だ。
「う……ん、アキ……」
少し鼻に掛かった甘えるような呟きがこぼれた。
「どうした?」
優しく聞き返したが、返事はない。
(寝言か……。それにしても、あんなに『ダメ、やめて』って言ってたのになぁ)
少し掠れた色っぽい声に煽られ、余計に激しく春樹の腰を揺さぶってしまったことに、ちょっぴり罪悪感を覚えていたが、春樹も本心は嫌ではなかったのだと分かり、岳秋はニヤリとした。春樹とキスを交わすと、彼は素直に、自分が教えた通りに応える。その健気さに、どれだけ岳秋が胸をときめかせているか。きっと春樹は気付いていないだろう。
(これからも、色々教えることがありそうだな……)
この柔らかい肌に吸い付いて良いのは、自分だけだ。蚊取り線香に火を付け、しっとりした肩に小さくキスを落とす。背後から裸のままの春樹を抱きしめ、岳秋は少しの疲労と大いなる充実感に満足げな溜め息をつき、もう一度眠りについた。
ともだちにシェアしよう!