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第6話 夏休み②

 お盆中は忙しいから来るなと釘を刺されたので会わず、お盆明けに隣町のジャスコへ遊びにいった。桐葉が行ったことがないというので、連れていくことになったのだった。市民プールが昨年閉鎖してしまって他に遊ぶ場もないし、遠出がしたかった。  国道294号線をずーっと真っ直ぐ南下する。おおよそ小貝川に沿っている。青々と繁る水田を抱き、紺碧の空を背景に、雄大な筑波山がそびえ立つ。なだらかな稜線が裾野を広げている。真夏の陽光を浴びて尾根は一層碧く輝き、谷はくっきりと陰影を描いていた。流れる雲までもがちらちら煌めく。    家から見える筑波山が一番綺麗だ。南へ進むにつれて形が崩れていく。二つある山頂の位置関係が変わり、バランスが悪いのだ。トンビが上空をくるくる回って獲物を狙っている。アブラゼミが暑苦しく鳴いている。アスファルトのひび割れから雑草が飛び出している。蚊柱に突っ込んで虫を食ってしまう。  国道なのにほとんど何もない。時々ラブホテルの看板があり、田園の中に鳥居がぽつんと立っている。アスファルトからの照り返しが酷く、延々と陽炎が揺らめいていた。ジャスコに近づくと徐々に活気を取り戻す。十キロぶりにコンビニと出会う。炎天下の中、五十分も自転車を漕いで、ジャスコに着いた。    俺たちは若かった。案外疲れていない。思ったほど遠くはなかったし、自転車でも来られるのだなぁと感慨深く思った。桐葉は俺よりぐったりしていて、しきりに汗を拭っていた。額に大粒の玉が浮かぶ。瞬きの度に睫毛が濡れる。頬を伝って顎から滴る雫が、陽光を乱反射して瞬いた。   「何見てんだ」 「汗、すげぇな」    桐葉は自分の体を見、それから俺の体を見た。   「お前もだろ」 「おう。パンツまで濡れた」 「はは、汚ぇ」    シャツの裾を持ってパタパタする。へそがちらっと覗いた。  店内は空調が効いていて快適だった。真っ先にフードコートへ向かい、アイスクリームを食べた。俺は普通にバニラを選んだけど、桐葉は新作のストロベリー味を頼んでいた。しかも、レギュラーサイズのダブルをコーンで。   「お前、そーゆーカワイイのが好きなの」    白くて丸いテーブルに向かい合って座り、アイスを舐めていた。桐葉の機嫌がよく、浮足立っているように見えたので、そう言って冷やかした。   「てめえも似たようなの食ってんじゃねぇか」 「俺のは別にかわいくないし、それにお前……ふふ、ダブルって……口ン中甘ったるくなるじゃん。どんだけアイス食いたかったの」 「うるせーぞ、イチゴを馬鹿にする気か」 「だってカワイイの象徴みたいなもんだろ? 好きな食べ物はイチゴですぅ、てプロフィールに書いてる女子、何人も知ってるぜ」 「イチゴを笑うなら、ばあちゃんのイチゴミルクを食ってからにしろ」 「うそぉ、イチゴミルクも好きなの? イチゴ好きすぎて、イチゴ柄のパンツとか履いてんじゃねーだろうな」 「んなの持ってねぇよ。お前が一番よく知ってるだろ」    思わぬ返しに俺は口をつぐむ。 「あ……た、確かに、そんな変な柄、一回も見たことねぇけど」  桐葉は澄ました顔でアイスを舐める。溶けてコーンの縁に溜まったアイスを舌ですくいとる。赤い舌に薄ピンクのみぞれが積もっている。   「おい、溶けてんぞ」  スプーンを向けて言った。俺は慌てて手元を見る。レモンとソーダが溶けて混ざり合い、テーブルにぽたぽた垂れていた。   「イチゴを馬鹿にするからだぜ」  桐葉は愉快そうに笑う。 「うるへぇ。それとこれとは関係ねーだろ」    俺は急いでアイスを食べる。食べながら、目は桐葉の口元を向いている。あちらのアイスも溶けてきたらしく、桐葉も一所懸命表面を舐め回していた。短い舌を伸ばしてぺろぺろ舐めている。いやらしい雰囲気とは程遠いのに、なぜか下半身に効いた。   「食わねぇのか。どんどん溶けるぜ」 「わ、わかってらぁ」    胃袋を冷やせば昂りも収まるかと思ったが無駄だった。口の中に滑らかな触感が広がる度、桐葉の舌の滑らかさを思い出す。そして桐葉の口の中にも、どろどろに融解したアイスクリームの残留物が溢れているのだと思うと、ますます我慢できなくなった。  食べ終わっても席を立たない俺を不審がって、桐葉は小首を傾げた。   「どうした? 腹でも下したか?」 「いや…………あ! いや、そう、便所行こうぜ」 「じゃあおれはここで待って――」 「何言ってんだ、お前も行くんだよ!」    状況をわかっていなさそうな桐葉の腕を引っ張り、トイレに連れ込んだ。幸いなことに人がいなかったので、無理やり個室に押し込んでしまう。後ろ手に鍵を閉めると、不機嫌そうに俺を見上げる桐葉と目が合った。   「おい、どういうつもりだ」 「いいから。ちょっとしゃがんで」    桐葉の肩を押し、その場に座らせる。ハーフパンツの前を寛げると、さすがに桐葉にも意味が通じたようだ。ぎょっとして、飛び出た息子と俺の顔とを交互に見る。   「な、なんで起ってんだ。まさかここでする気か?」 「俺にもわかんねぇ。けど、ちんこがむずむずしておかしくなりそう。今すぐ出したい」 「馬鹿言ってんじゃねぇ。嫌だぜ、こんな……お前、変態かよ」 「いいから黙って咥えろよ。すぐ終わっから」    逃げようとする桐葉を押さえ付け、強引に突っ込んだ。うっかり奥まで入ってしまって、少しえずいた。桐葉は涙を浮かべ、恨めしそうに俺を睨む。そんな顔されてもやめられない。むしろ余計に煽られる。征服欲が満たされる。   「はぁ、噛むなよな」    右手で髪を鷲掴み、左手で頭を撫でた。桐葉は俺のを咥えたままもごもご喋っていたけどよく聞き取れない。誰か来たらどうするんだと言っているのだと思う。   「さっと終わらせりゃいいんだよ。一回出したら収まるからさ。早くイカして」 「ほんほらろうな」 「ほんとほんと。後でお前にもしてや――」    じゅるるるる、と音を立て、凄まじい勢いで吸い上げた。まるでダイソンだ、などと笑ってる場合じゃない。俺は呆気なくイッた。  桐葉はハムスターのように頬を膨らませて精液を溜めていたが、いきなり便器にかじりついたかと思うと一気に精液を吐き出した。苦しそうに咳き込みながら、喉の奥に絡みついたねばねばを必死に取り去っている。   「お前、いつまでも慣れねぇなぁ」 「うっせぇ。てめえのこれがまずすぎんだ」 「俺はお前の精子の味嫌いじゃねぇんだけど」 「こんなもんに慣れてどうする」    桐葉はしゃがみ込んだままこちらを振り向く。意外にも、勝ち誇ったような清々しい顔をしていた。   「それにしても、ずいぶん早かったな?」 「あんなの反則だろ。ズルだ、ズル」 「ルールなんてあるかよ。一回で終わりって約束だ。口ン中が苦くてたまらん。サイダーでも奢れ」    桐葉は唇を擦りながら立ち上がったが、俺はその足元に座り込み、素早くファスナーを下ろした。桐葉は驚いて腰を引く。   「っ、なにして」 「言ったろ。後でお前にもしてやるって」 「は、離せ。嫌だ、こんなとこで」 「いーじゃん。ほら、もう起ってきた」 「はぁッ、ア、い、やだぁ……」    ちょっと擦るとすぐ勃起する。桐葉も人のこと言えないくらい変態だ。口では嫌がってるくせに、ちんこが萎える素振りはない。体は正直とはこのことだと、どこぞのエロ漫画で見た台詞を思い浮かべる。   「すぎ、ィ、も、だめッ、だめぇ」 「きもちいだろ? 口でするか?」  ぶんぶん首を振る。 「ッぐ、すぐ、でちゃ、から」 「へへ、かわいー」    さっき食べていたストロベリーよりも濃いピンク。てっぺんに透明の玉が浮かんでいる。ちろちろ舐めると糸を引いた。桐葉のちんこがアイスクリームに見えてきた。塩味のアイスクリームだけど。    桐葉の膝がガクガクいっている。立っていられなくなったらしく、ふらふらと腰を下ろした。便器の上でみっともなく大股を開いている。声を殺そうと必死だが、荒い息の合間にどうしても甘い声が混じる。  ちんこが小刻みに震えた。もうイクのか。さっきされたみたいなフェラで仕返ししてやろうかな。などと思っていた時だ。キィーっとトイレのドアが開く音がした。    瞬時に、俺も桐葉も動きを止めた。互いに顔を見合わせる。ドアを開けて入ってきた足音は小便器の前で止まり、続いて排尿音が聞こえた。桐葉は切なげに眉を寄せ、両手で口を塞いでいる。俺の手の中で、桐葉のちんこも切なげに震えている。はち切れそうなほど大きくなっているのにおあずけなんて鬼の所業だ。俺は条件反射的に食らい付いた。   「っぐ、ンンッ――――!」    桐葉は激しく背中を仰け反らせる。排水タンクに後頭部をぶつけ、便蓋もガタガタと音を立てた。声は堪えたが、イクのは我慢できなかったらしい。舌の上に青臭い味が広がった。でも量はそう多くなく、思い切って飲み込んでしまった。  桐葉は覚束ない手付きでズボンのファスナーを上げ、噛み付くような鋭い眼差しを向けた。俺も自分のイチモツを仕舞い、曖昧に笑った。   「笑って誤魔化してんじゃねぇ!」 「あっ、ちょおっ」    桐葉は体当たりで俺を突き飛ばした。大した力じゃなかったと思うけど、鍵が甘かったのかドアが開いてしまい、俺たちは雪崩のように個室の外へ飛び出した。俺は仰向けで倒れ、桐葉は俺の上へ乗り上げる。トイレの床で寝るなんて汚ぇ、最悪だなと見当違いなことを考えた。    桐葉は拳を振り上げたが、振り上げたところで硬直し、かぁぁっと顔を真っ赤にしたかと思うと矢のように走り去った。起き上がって周囲を見、俺も状況を理解する。さっき入ってきた人が、まだ出ていっていなかった。いや、別の人なのかもしれないけど、とにかく人が立っていた。汚いものを見る目で俺を見下ろしている。  俺は真っ青になり、這うようにしてトイレから逃げ出した。先に脱出した桐葉はというと、出てすぐのところで転んだらしく、うつ伏せに倒れ込んでいた。俺は急いで抱き起こす。   「おい、大丈夫か? 腰立たねぇの?」 「うるせぇ触んな。この、ヘンタイヤローが」 「そんな怒んなよ。カルシウム足りてねぇのか? だってあんなすぐイクと思わなくてさぁ。バレちゃうかもって興奮したの?」    にやついて言う俺を、桐葉はぽかぽか殴った。   「わ、悪かったよぉ。ほら、あっちのソファ座ろうな」 「クソ、肩貸せよ」 「やっぱ腰立たねぇんじゃん」 「誰のせいだと……」    トイレから離れたソファを探して休憩した。桐葉は俺にもたれかかり、長い溜め息をつく。   「なんだって急にやる気になったんだ。ちっとは状況を考えろ。てめえは猿以下か?」 「お前だってビンビンに起たせて感じてたくせに」 「もっかい殴られてぇようだな」 「そうカリカリすんなってぇ。将来禿げるぜ。トイレでするのなんてシチュエーション的にはありがちじゃん」 「ねぇだろ。どの世界線の話だよ」    学校のトイレでエッチする漫画読んだことあるもん! とは言わなかった。桐葉はエロ漫画もAVも見ないらしかった。存在を知らない可能性まである。   「……フルフル夏みかんゼリー」    桐葉がやにわに口を開いた。   「は?」 「フルフル夏みかんゼリーとカルピスソーダのピーチ味、買ってこい。そこの自販機に売ってる」 「フルフ……」    噴き出しそうになってぐっと堪えた。桐葉は至って真面目な顔である。これ以上怒らせるのはまずい。こいつ、やっぱり甘いもの好きなのかな。家では煎餅ばっかり食ってるのに。   「それでチャラにしてやる」 「もぉー、わがままなんだから。お姫さんかよ」 「わがままはどっちだ。万年発情期野郎」    アイスクリームだけでも結構でかい出費だったのに、まさかジュース二本も奢らされるとは。しかし仕方ない。喉を潤した後、店内をぶらついて、特に買い物はせずに帰った。

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