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第7話 夏休み③
夏休み最後の週だった。同じ部活だった友達と、駅前のファミレスで駄弁っていた。駅前と言っても全く栄えていない。そもそも駅が栄えていない。北口にはぎりぎりニューデイズが入っているが、南口は常にテナントを募集している。
駅近辺は基本的に住宅街だ。俺の実家の方じゃ珍しい集合住宅もいくつか建っている。北側は市役所以外はシャッター通りだが、南のメインストリートにはスーパーやコンビニやパチンコ店や飲食店が並んでいる。しかしそれも百メートルも過ぎればぱったりと途絶える。その先は肥やし臭い田畑が広がっているだけだ。
俺は駅より南の地域に住んでいる。通ってる中学も南中と言う。だから駅より北にはほとんど行かない。南にファミレスもカラオケもあるので、特に文句はない。でもゲーセンとツタヤが近場にないのは気に入らない。自転車で三十分もかかる。
話が逸れた。家から自転車で十五分ほどの距離にあるファミレスで、久しぶりに友人二人とおしゃべりしていた時のことだ。お昼を食べに来たんだけど、時刻は既に三時である。ドリンクバーを延々とお代わりし続けていた。
「なぁー、アナルセックスって知ってるか?」
「もういいよぉ、お前が彼女とセックスした話はよ」
「いや聞けって。彼女の話じゃねぇよ。杉本は気になるだろ?」
「惚気話なら聞かねー」
「どうせまた彼女とお風呂入ったんだろ」
「公園でヤッてんのがバレて親にぶたれた話かもしんねーぞ」
「だーかーら、惚気じゃねぇんだって。先輩に聞いた話なんだけど……」
どうやら特殊プレイの話らしかった。尻の穴を使ったセックスというものが、この世には存在するらしい。
「うぇぇ、汚くね?」
もう一人の友人が言う。
「それに痛そう」
俺も言った。
「案外大丈夫らしいぜ。女だから汚くないんじゃね?」
「んなわけあるかよ。女だって汚い時は汚ぇぞ。お前、彼女に頼んでヤラしてもらったの?」
「いや、実際やろうとすると引かれるからやめた方がいいって先輩にも言われた……」
「ああ、だよなぁ」
「でもほら、3Pとかあるじゃん? 男二人女一人の時とか、使えるんじゃね?」
二人は下世話なことばっかり話していた。俺はというと、桐葉のことを考えていた。正確には桐葉の尻のことを考えていた。桐葉にも穴はあるんだよな。普通のセックスをするのは逆立ちしても不可能だけど、アナルセックスなら俺たちにもできるんじゃないか? 胸が躍った。
「なぁなぁ、男にも尻はあるよな? 男もそれできるのか?」
俺が言うと、二人とも目を丸くした。しまったと思う。これではまるで、俺が変態みたいじゃないか。
「いやほら、女の子に指入れてもらったりとか? そういうのもできるのかなぁって」
「あー、なんか、東京にはそういう店もあるっぽいぞ。風俗嬢がやってくれるんだってさ。何とかマッサージって言ったけど、細かいことは忘れた」
「杉本ォ、お前そういう趣味だったのかよ。マゾじゃん。女王様に踏まれたい系?」
「そんなんじゃねぇよ! ただちょっと興味湧いただけだし。おもしろそうじゃん」
品のない笑い声が響いた。全く、田舎の男子中学生なんてろくなもんじゃない。俺もそのうちの一人だけど。
アナルセックスに興味が湧いたというのは嘘じゃない。帰宅するなり即パソコンを立ち上げて、アナルセックスについて調べまくった。
どうやら、男同士でも問題なくできるようだった。男の場合、ケツの中に前立腺というのがあって、そこを触ると女の子並みに気持ちよくなれるらしい。多少の訓練は必要らしいが、前立腺だけで射精したり、射精しないでイッたりするのも夢じゃないと書いてあった。
ハマればちんこよりも気持ちよくなれるそうだ。射精しないでイクってのがどんなもんなのか一切想像つかないが、とりあえずそういうことらしい。
俺は固く決意した。近いうちに絶対桐葉とセックスするぞ、と。
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