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第51話 「正直自信がない」
それから俺達は――寝台へと移動した。ど緊張してしまった俺は、上手く服が脱げない。焦りながらシャツを脱いでいる俺の前で、ルカス陛下は非常に余裕そうな顔で、香油の瓶をそばのテーブルに置いている。冷静な顔をされているのが、悔しい。
「オルガ、まだか?」
「上手く脱げなくて」
「それは断り文句か? もう二十分もお前はシャツを脱ごうとしたまま動かないが……嫌なのか? そうなのか?」
「そんな事無いです! 大歓迎です!」
「――では、脱がせても良いか?」
「待ってくれ、心の準備が!」
俺がそう叫ぶと、ルカス陛下が手を伸ばしかけた状態で止まった。そしてまじまじと俺を見た。
「分かった。あと五分待つ」
陛下は嘆息し、シーツの上に手を付いた。それを見ながら、俺はシャツと格闘する。
「陛下は脱がないの?」
「俺はこの状態からなら、二分もかからずに脱げる」
先ほど脱いだ外套を、陛下が一瞥した。なるほど。既に準備は万端なのだろう――と、考えて、俺はつい陛下の下衣を見てしまった。何気なく視線を下ろしたのだ。
「!」
そして俺は、既に自己主張している、陛下のブツの存在に気づいてしまった。まだ何もしていないのに反応している……! 俺の方は、緊張と期待の狭間で、まだそこまでじゃない。
「あと三分――全く進んでいないぞ、手が」
「陛下、ごめんなさい」
「今更止めろというのか? さすがにそれは辛い」
「そうじゃなくて、ひとりでは脱げないっぽいです。俺、手が震えちゃって」
「っ、そうか……今脱がせる」
素直に俺が伝えると、陛下がビクリとした。それから、おずおずと俺のシャツのボタンに手をかけた。ポツポツと脱がされると、あれほど俺には大変だった作業が一瞬で終わった。こうして全裸になった俺は、ベッドの上に膝をついて座った。ルカス陛下は真横に座っている。
「オルガ、最初に言っておく」
「なんですか?」
「俺は、当初は国王になる予定は無かったんだ」
「はぁ」
「異母兄を異母弟と共に支えて生きていくと思っていた」
「はい」
「――だから、俺には特に閨の家庭教師などはいなかった」
「と、言いますと?」
「これまでに妃もいなかった。だ、から、つまりだな……」
「うん?」
「正直自信がない」
「大丈夫です! 俺も自信ゼロです!」
俺が断言して大きく頷くと、ルカス陛下が喉で笑った。
「恐らく俺とお前では自信の方向性が違うと思うが」
「え? 勃つかな……というのは、もう勃ってるけど、そういうのとか、入るかなとか、中折れとかの心配だよな?」
「いいや――もう自分を止められる自信が無いという心配だ」
ルカス陛下はそう言うと俺を押し倒した。シーツに後頭部がぶつかった瞬間、俺は焦って目を見開いた。俺の右の首筋を手で撫でると、じっと陛下が俺を見た。いつもより真剣に見える眼差しに、俺は今になって冷や汗が出てきた。
「ぁ……っ、ッ」
鎖骨の上に口づけられて、俺はビクっとした。触れた唇の温度は優しいのだが、緊張しないというのとは話が別だ。
「ン」
少し強めに吸い付かれると、それだけで声を出してしまう。
「あ」
左手で乳頭を摘まれた時には、思わず俺は声を出してしまった。触られている。ルカス陛下が俺に触っている。それだけでも何故なのか衝撃的すぎた。気持ち良いとか悪いとかではなく、衝撃が強い。
「……っ」
緩急をつけて胸を弾かれると、腰がふわふわし始めた。ジンっと甘い疼きが胸から広がっていく。優しく羽で撫でるように転がされたかと思えば、次の瞬間にはキュッと強く乳首を擦られて、気づけば俺は息を詰めていた。
「あ、ああっ」
「――本当に声が大きいんだな」
「だって、指が入ってきた!」
「まだ菊門をつついただけで、入ってない」
「え」
ルカス陛下はそう言って笑うと、香油の瓶を手繰り寄せた。それを右手の人差し指に垂らすと、どこか楽しそうな瞳で俺を見た。
「!」
それからすぐに、今度こそ指が入ってきた。だって、ぬるりという感触と共に、俺が知らないほど巨大な何かが入ってきたのだ。
「え、え、ええ!? ちょっと待って、これ指?」
「ああ、人差し指の先端だ」
「っ、うあ!」
「まだ第一関節まで、入ってない」
「!!」
俺は目を見開いた。ちょっと無理がありすぎる。ルカス陛下の指は普段見ている限り、ごく普通だ。長いかもしれないが、太いと思った記憶はない。それがこんなにも大きく感じるとは。
「待って、待って、ああ、あ、あああ、うああああ」
「待てない。先ほどもう止める自信がないと伝えただろう?」
「けど、あ、あっ、大きいっ」
「――っ、すぐにでも挿れたくなるから、少し声を抑えてくれ」
「無理!」
その後、第一関節までようやく入りきった頃には、俺は涙ぐんでいた。過去に経験した事を思い出しても、こんなに奥深い場所まで指が入ってきた事は無い。人体の神秘だ。
「んっ、ンん!」
「第二関節」
「あ、ああっ、うあ、ア」
「もう少し」
「やあああああ」
容赦なく俺の中へと指を進めたルカス陛下は、根元まで人差し指が入りきった所で、その指を震わせ始めた。振動する指がもたらす刺激が、俺の全身に不思議な感覚を呼び覚ます。
「ゃ、ぁ、ア、あ、あああっ、う、ンあ!」
「ここが好きか?」
指先でルカス陛下がある箇所を刺激した途端、俺の全身が痺れたようになった。俺の眦からは涙がポロポロと溢れる。信じられないくらい――気持ちが良い。
「待って、待ってくれ、本当に待って」
「オルガ、それこそ無理だ。痛いか?」
「そうじゃなくて、だって指でこんなに気持ち良かったら、これ以上されたら俺はどうなるんだ!?」
率直に不安を訴えると、ルカス陛下が目を丸くした。それから吹き出すように笑う。
「あああああ!」
そして指の動きを早めた。
「待って、あ、待ってって言ったのに、うああ、あ、あン――!!」
「もっともっと気持ち良くなったらいい。それだけだ」
「ん――!」
そのまま長い時間、俺はルカス陛下に指でほぐされたのだった。
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