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第56話 「だめだ、我慢ができない」
俺は抱き枕オプションで目を覚ました。
「ん」
ルカス陛下が俺の唇にキスをした感触で、静かに瞼を開ける。
「おはよう、もう日が高いぞ。まぁ、今日は俺もお前も休みだが」
その言葉を聞きながら、俺は、俺を押し倒しているルカス陛下を見上げた。上に載って俺を抱きしめるようにしている。身動きができない俺は、重みを感じながらベッドに沈んでいた。……俺の太ももに、ルカス陛下の陰茎があたっている。ちょっと硬い。
「んぅ」
すると再びキスをされた。今度は深い口づけだった。舌を絡め取られ、歯列をなぞられる。するとゾクゾクと俺の体に快楽が這い上がってきた。この前知ったばかりの感覚を喚起したら、俺の陰茎まで朝勃ちを超えた硬度になってしまった……。
「オルガが欲しい」
「……俺も」
恥ずかしかったから小さな声で答えると、陛下が嬉しそうに頬を持ち上げた。それから夜着を乱されて、鎖骨の少し上に吸い付かれる。その箇所がツキンと疼いた。
「消えないように、毎日痕をつけたいものだな」
「ぁ……っ」
キスマークを付けられた場所を、何度も舐められて、俺は小さく声を上げた。すると左胸を覆うように掌をあてがわれ、指と指の間に乳首を挟まれた。陛下がその指を開閉するように動かす。もう一方の右手では、陰茎を撫でられた。
「反応してるな」
「ッ」
キスだけで勃ってしまった事が無性に恥ずかしくて、俺は息を飲んだ。すると陛下が気をよくしたように、何度も陰茎を撫でる。
「ぁ、ぁ、ぁ」
すぐに俺のものは硬くなり、先走りの液を零し始めた。陛下は香油の瓶を手繰り寄せている。それを指にまぶすと、ゆっくりと二本の指を、揃えて挿入した。
「ン」
まだ経験が浅い俺には、指だけでも衝撃が大きすぎる。それも二本が一気に入ってきたのだ。
「あ、ア」
グッと指の根元まで一気に挿入され、かき混ぜるように動かされる。その刺激から、全身にジンジンと甘い快楽が響き始め、すぐに腰の感覚がなくなっていった。
「ゃ……ァ……ンん」
「だめだ、我慢ができない。挿れるぞ」
「あ!」
指を一気に引き抜き、俺の菊門にルカス陛下が亀頭をあてがう。そしてまだきついそこに、楔を進めた。切ない痛みがしたが、その衝撃すら気持ちよく思えた。どんどん広げられていく感覚がする。やはり、太くて長い。指とは存在感が違いすぎる。
「あ、あ、ああっ、ッ、ん、フぁ」
「辛いか? 悪いな」
「平気……あ、あ……ああア!」
その時、再び一気に最奥まで貫かれて、俺は思わず声を上げた。その刺激が強すぎて、俺はもがく。すると両手首を掴まれて、シーツの上に縫い付けられた。
「や、あ、気持ち良っ」
「俺もだ、っ」
「あああああ!」
嬲るようにグリグリと陛下が、俺の最奥を刺激する。全身に稲妻のような快楽が走り、視界がバチバチと白く染まる。けれど体重をかけられ手首を掴まれているから動けない。俺の陰茎が陛下の腹部に擦れている。
「あ、あ、ぁ、ア……ぁぁァ、やぁァ」
「嫌か?」
「出る、あ、出る」
「――中だけで出せるか?」
「んア――!」
最奥をさらに強く突かれた時、俺は射精した。気持ちの良い絶頂感に、全身が震え、汗ばんでいる。髪がこめかみに張り付いてくる。すると一度動きを止めてから、陛下が俺に言った。
「俺は、もっと欲しい。動いて良いか?」
「う、うん」
「――ああ、悪いな。本当にもう我慢ができそうにないんだ。自分が抑制できない」
「! ひ、あ、あああああ!」
その時、陛下が激しく動き始めた。そして最奥ばかりを嬲るように突き上げる。そうされるとすぐに再び出そうになったのだが、もう出せない。俺はそんなに何度も果てられないのだ。
「やぁ、あ、あ、あああっ、ダメ、あ、ダメ、ダメだ」
「もっと、だ」
「あ、ああああ、あ、陛下、あ、っ、そこ、いやああ」
「良い、だろう?」
「出る、あ、出せないのに、もう出ないのに、あ、あ、おかしくなる」
「俺のものでおかしくなってくれ」
「やああああ!」
奥深くを貫かれた瞬間、何も考えられなくなった。
俺は出ていないというのに、射精感に襲われたのだ。
「嘘、あ、嘘、何、ああ、あああああ!」
「男もな、中だけでも果てられるんだぞ」
「いやああああああああ!」
長く響くように射精感が続いていく。なのに前からは何も出ていない。俺は震えながら泣いた。気持ちよすぎて、わけがわからない。長い余韻が残っていて、ずっと出しっぱなしの感覚がする。
「んん、あ、あ、あああああ!」
まだ快楽の波に襲われていたというのに、再び陛下が動き始めた。律動が次第に激しくなっていき、再び、先ほどのおかしくなる箇所を強く突き上げられる。俺は絶叫した。そしてむせび泣いた。そのまま息が凍りついたようになり、再び全身に射精感が広がっていく。
「ンあ――!!」
陛下も中へと放った感覚がした。荒い吐息が俺の肌に触れる。涙で歪んだ瞳で陛下を見上げると、苦笑していた。
「ドライだ」
「あ……ぁ……」
何か言おうとしたのだが、俺の声は掠れていた。そんな俺から手を離すと、一度陛下が陰茎を引き抜いた。どろりと白液が垂れたのも分かる。俺の太ももが濡れた。
ぐったりと寝台に体を預けていると、陛下が俺の左側に横になった。そして俺を抱き寄せると、頬にキスをした。
「悪い、止められなかった。欲を言えば、もっと欲しいほどだ」
「もう無理です」
「悪かった」
苦笑したまま陛下はそう言い、それからベッドサイドの抽斗を開けて、小箱を取り出した。
「それは?」
「本当は昨日渡そうと思っていたんだが、一日遅れてしまった」
陛下はそう言うと小箱を開けて、指輪を取り出した。そしてそっと俺の左手を取ると、人差し指に指輪をはめた。
「右手と左手の薬指には婚約と結婚の指輪をはめなければならないからな」
「!」
そう言って陛下は、微笑した。俺は指と陛下を交互に見る。指では、光の加減で白にも見えるダイヤで作られた薔薇の花がついた指輪が光っている。
「白い薔薇を贈るのだろう? これしか用意できなくてな」
「陛下も用意してくれたのか……」
「ああ、それとこれを」
陛下は続いて抽斗から、一冊の本を取り出した。眠りの森の王子様という絵本だった。
「この話の内容を知っているか?」
「知ってる。みんなが眠ってしまった城がある森で、たった一人目を覚ましている王子様だけが働いていて、疲れていたら、ある時別の国の王様がきて、休んで良いって伝える御伽噺だ」
「そうだ。オルガは、働き過ぎるきらいがあるからな。あまり無理をしないように、これをしっかり読むように」
ルカス陛下はそう言うと、楽しそうに笑った。俺は頬が熱くなった。
「俺が贈った本の内容は知っている?」
「砂の城に住んでいた王子が、ある日旅人と恋に落ちて、城を壊す童話だろう?」
「うん。ルカス陛下は最近優しすぎて恋にのぼせている感があるから、決してこの国を壊したりしないようにっていう教訓を込めて!」
「――あ、ああ。そうだな。しかしその童話が好きだというのは、理由は?」
「賭け事で身を滅ぼさないようにと思って繰り返し読んだんだ。俺はポーカーに恋をしていたからなぁ」
俺の声に、ルカス陛下が吹き出した。
こうしてこの日は、二人揃ってお休みだったので、ずっと寝転がって話をしている事にした。幸せな朝だった。
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