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第60話 「オルガが俺に『待て』をしてきた……だと?」

「ン……っ……」  ルカス陛下に雁首を重点的に刺激され、俺は考えた。俺との違いであるが、俺は唇に力を込めなかった。しかし陛下は唇でじっくり俺を昂める。他の違いは、俺は首を必死で動かしたが、ルカス陛下は頬を動かしている。  なるほど。労力を少なくしたら良いのか……? 頑張って顔ごと動かす必要は無かったらしい。その方が気持ち良いのか。俺は脳裏にメモしながら、ルカス陛下の動きを観察した。すると暫くしてから、陛下が顔を上げた。 「どうだ?」 「出そう」 「――覚えられたか?」 「心にメモしました」 「では、復習がてら、もう一度俺のものを口でしてくれないか?」 「えっ、俺もう出る。出したい。お願いだ、陛下」 「ッ……オルガのお願い……ああ、全て叶えたくなってしまう。そうだな、復習は後回しで良いか」  そう言うと、陛下が口の動きを早めた。 「ぁ、ああっ……ア、あ!」  そのまま呆気なく俺は放った。肩で息をしていると、顔を上げた陛下が俺をじっと見た。 「復習は後でとして――挿れても良いか?」 「まだダメだ」 「まずは慣らす」 「その前に、まだ息が辛いんだ。俺の事が好きなら待てるだろう?」  本音をそのまま口に出すと、ルカス陛下が息を呑んだ。 「そんな……俺が言葉責めをするはずが、オルガが俺に『待て』をしてきた……だと? ご主人様気質か!?」 「ご主人様? どういう意味だ?」 「何でもない、断じてなんでもなかった。そ、そうだな……息が落ち着くのを待とう」  ルカス陛下は香油の瓶を手に取りながら、一人ゆっくりと大きく頷いた。  そうしながら指に香油をまぶし、一度長めに瞬きをした。  それを見ている内に、俺はやっと呼吸が整った。 「慣らすぞ」 「っぁ、やあ、大きいっ」 「指一本がそんなに大きく感じるのか?」 「うん、あ、ア」 「――俺のものは、いつもどう感じるんだ?」 「熱くて固くていっぱいになる」 「――気持ち良いか?」 「多分」 「多分!? オルガ、それはどういう意味だ……? そ、そんな……」 「何も考えられなくなっちゃうからなぁ」 「っ……そ、そうか」  ルカス陛下は俺の言葉に、安堵したように吐息した。それから一度引き抜き、指先で、俺の後孔に触れる。襞をなぞるようにした後、菊門をつついた。 「んっ」 「次は、二本だ」 「あ!」  今度は二本の指が進んでくる。ゆっくりと、しかし着実に進んでくる指の感覚に、俺は震えた。背筋がゾクゾクしてくる。 「んア!」  その時、指先の先端で感じる場所を刺激され、俺は思わず大きな声を上げた。 「あ、ああっ」  二本の指先を揃えたルカス陛下は、そこばかりを刺激する。そうされると全身に快楽が響いていき――やはり、何も考えられなくなっていく。すると今度は弧を描くように動かされ、思わず体をしならせた。全身が熱を孕んでいく。暫くの間、丹念にほぐされた後、指を引き抜かれた。ルカス陛下が俺の太ももを持ち上げる。 「挿れるぞ。良いか?」 「ダメ」 「え」 「これ以上されたら気持ちよすぎてダメだ」 「――本音を言う病、良い仕事をしすぎだ。もっともっと気持ち良くなってくれ」  嬉しそうな笑みを浮かべると、喉で笑ってから、ルカス陛下が俺の中へと楔を進めた。 「ああッ、ン――!」  衝撃に俺は嬌声を上げてから、息を詰めた。圧倒的な質量に貫かれ、震えながらギュッとシーツを掴む。体が蕩けてしまいそうなほど、熱い。  律動が始まり、次第に激しい動きに変わっていく。香油が立てる粘着質な音に、俺は恥ずかしくなって、目も閉じた。するとルカス陛下が喉で笑った気配がした。 「少し、慣れてきたか?」 「あ、あ、っ、こんなの……慣れるわけがない!」 「いつまでも初々しいな」 「うるさい! あ、ああああ!」  反論しようとしたら、激しく突き上げられて、俺は大きく声を上げた。全身が汗ばんでいき、既に俺の陰茎は再び反応を始めている。 「ゃァ、あ、あ、ああああ!」  そのまま一際大きく動かれた時、俺は放った。同時に内側で飛び散る、ルカス陛下の白液の存在を感じた。  ――事後。  ぐったりと横になった俺は、何度も大きく吐息していた。ルカス陛下は俺の隣に寝転んで、こちらを優しい顔で見ている。俺もルカス陛下を見たので、横になったままで俺達の視線が合った。 「オルガ、俺はお前が好きだ。きちんと伝わっているか?」 「うん」 「良かった。ところで、もう一回、ヤっても良いか?」 「ダメ」 「……どうして?」 「もう疲れた。それに、次までに俺は、イメージトレーニングをして、ちゃんとルカス陛下にも気持ち良くなってもらわないとならない」 「っく、うあああ、オルガは健気だなぁ」 「俺が健気? 一体俺の何を見てるんだ? 何か、目にフィルターでもついているんですか? そうなのか?」 「……たまに雰囲気をぶち壊す本音も出てくるらしいな。覚えておこう」  そう言うと、ルカス陛下は吹き出した。その表情が、苦笑しているようにも、楽しそうにも見えて、俺もまた笑みを浮かべた。  俺達はそれから一緒に眠る事にした。俺がいつ発病したのかは分からないが、潜伏期間を考えると、残り一週間程度、俺は本音ばかりを言ってしまう可能性がある。妃業務はお休みにした方が良いだろう。ミスカに聞いたような問題を起こしても困るし、誰かに感染させてしまっても困るからだ。おとなしくしていよう。  そう誓って瞼を伏せると、すぐに眠気が訪れた。ルカス陛下に腕枕をしてもらいながら、そのまま俺は眠りに就いたのだった。

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