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第62話 結婚

 しかし、してやられるだけでは――嫌だ!  俺だって、聞きたい。 「陛下は、俺の事が好き? 好きか?」  目を開けて俺が問うと、ルカス陛下が目を丸くした。 「どうしてそんな事を聞くんだ?」 「俺ばっかり言うのは嫌だ」 「――俺はもう好きすぎて、言うまでも無いと思っていた」 「え?」 「俺の溢れた好意は目に見えるだろう? 俺としては、オルガの気持ちがもっと知りたいんだ」  その言葉に、俺はルカス陛下の胸に両手をついて、小さく首を捻った。  確かに、ルカス陛下からの愛は溢れていると思う。だが……。 「俺だって、病気にならなくても、溢れていたと思うんだけどなぁ……」 「恋とは人を不安にさせるものだ」 「……」 「それに、オルガに『好きだ』って言ってもらえると、心が温かくなる。好きな声、表情、眼差しで、『好きだ』と言われると、これ以上の幸せは無い」  確かにそれは、俺も同じ気持ちだ。そう考えていると、背中に腕を回された。 「もっと沢山、本音を聞かせてくれ」 「俺は、賭け事は好きだけど、比較的いつも本音なんだけどな」 「何か欲しいものはあるか?」 「ルカス陛下」 「――俺はもう、オルガのものだ! オルガも俺のものだろう?」 「うん」  そんなやり取りをしてから、俺達は唇を重ねた。慣れてきた優しい温度に、胸がトクンと疼く。それから俺達は、寝台へと移動した。ルカス陛下がするすると俺の服を脱がせる。俺はされるがままになっていた。陛下は、「嫌か?」とは聞かなかったし、俺も嫌ではないからそのまま押し倒された。今度は、聞くまでもなかったのかもしれない。俺達は、お互いを欲していると、もう分かっているのだと思う。 「ぁ……」  一糸まとわぬ姿になった時、左の乳頭を弾かれて、俺は短く声を上げた。  ルカス陛下は右手では、俺の右胸の突起を摘んでいる。  次第に俺は、胸への刺激で、陰茎に熱が集まるようになってきている。ルカス陛下に開発されてしまったようだ……! 「俺……童貞だから病気になったのに、こんなに短時間で、こんなに気持ちよくなれるようになるなんて……」 「素直な体なんだろう」 「ルカス陛下が上手いんだ」 「っ……嬉しい事を言ってくれるんだな」  そんなやり取りをしていると、ルカス陛下の右手が俺の陰茎へと伸びた。ゆるゆると撫でられた時、俺はハッと思い出した。 「こ、今度は、今度こそは、俺が陛下を気持ちよくする!」 「――オルガに触れているだけで、俺は気持ちが良いぞ」 「え」 「だから……前回の復習はまた今度で良い」  それからすぐに、香油をまぶしたルカス陛下の指先が、俺の中へと入ってきた。すんなりと二本の指が入るようになったが、俺の大きな声は止まる所を知らない。 「あああっ、あ、ああ!!」  的確に感じる場所を刺激されて、俺は悶えた。ルカス陛下は意地悪く、俺の前立腺ばかりを刺激する。快楽から涙ぐんだ俺は、ポロポロと頬を雫で濡らした。その後しばらく慣らされて、俺が荒い吐息をしていると、ルカス陛下が陰茎を中へと進めてきた。 「やぁあ、あ、あ、ああ!」 「嫌か?」 「気持ちよすぎてダメになる! あ、あ、あああ!」  俺の言葉が終わる前に、ルカス陛下が激しい律動を始めた。その刺激が気持ちよすぎて、心が満たされるようになり、俺はルカス陛下の首に両腕を回す。いつもより性急な動きでルカス陛下は俺を貫いた。俺の背がしなる。 「出る、あ、あ、あああ!」  そのまま俺は果て、ルカス陛下もほぼ同時に放った。  肩で息をしていると、ルカス陛下が陰茎を引き抜き、微苦笑した。 「悪い、今日は早かったな」 「長かった」 「オルガは体力が無い」 「ルカス陛下が遅漏なんだ」 「それは無い。俺はごく普通だ」  それからは、二人で横になった。俺は今ではサービスなんて思わないくらい、すんなりとルカス陛下に腕枕をされている。そんな俺の横髪をなでるように、ルカス陛下が指を動かした。 「オルガ」 「なんですか?」 「病気じゃなくとも、俺にいつも本音で話してくれるか?」 「元々本音ばっかりです」 「――ああ、それが心地よい。二人でこれからも、愛を築こうな」  ルカス陛下はそう言うと俺の頬にキスをした。  その後、一週間が経つまで……ルカス陛下は、ずっと俺に、好きかと聞いた。だけど、俺が発病した正確な日時も不明だし、合計俺は二週間、好きだと言い続けた……だって、好きなんだから仕方がない。  欲しいものは散々リクエストしたから、仕事は捗るようになった。それは、まぁ別として――こうして俺は、お妃様になるために頑張った。無論、それは今では、ルカス陛下にふさわしい人間になりたいからで、隣に並びたいからだ。  そんな日々を過ごし――……病気が治ってから、あっという間に一年が経過した。  俺の正妃様になるための修行期間の終了である。その間に、五回ほど、結婚を早めないかとルカス陛下に言われたけれど、宰相閣下が断固拒否していたのを俺は知っている。俺も端緒を思い出すと後ろめたい(?)から何も言わなかった。  そして。  本日、俺は無事に、正妃となることに決まった。  今俺たちは、王宮で結婚式をしている。空いていた左手の人差し指に、俺は指輪をはめてもらった。 「誓いのキスを」  その言葉に、俺は気恥ずかしくなりつつ、目を伏せる。すると、既になれた温度がすぐに降ってきた。  このようにして……俺たちは正式に結婚した。なんだか怒涛の出会いで、視察で、病気で、書類仕事で……色々あったようにも思う。だけど、俺は幸せだから、これで良いのだと思う。本当は、もっともっと、俺たちの間にあった多数のできごとを逐一誰かに報告したいほどだけれど――全てが愛に溢れているから、もう語ることはないようにも思う。  とにかく俺は、幸せだ。だから――誰かにこの幸せをおすそ分けしたいほどだ。  みんなが、めでたしめでたしになるように。 【完】

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