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恋のマッチアップ番外編 膠着状態7

「いやいや! 俺の愛の告白に、笹良ってば顔を真っ赤にしたじゃん! 全然落ち着いてなかったって」 「好き好き言われ慣れていないからだよ。しかも加賀屋は、なにか誤魔化そうとするときに限って、この言葉を使ってるような気がしてならない」 「そんなことないっ! 俺は笹良が好きなんだ、誰にも負けないくらい大好きだ!!」 「言えば言うほど、墓穴を掘ってる。なおさら信ぴょう性が感じられない上に、俺の気を逸らして話を変えようとしてるだろ?」  互いに一歩も引かない口論が続く。俺は意地でも負けないぞという気持ちを込めて、加賀屋を睨みつけた。 「笹良を好きな気持ちを、可視化できないのが悔しい……。どうすればわかってくれるんだ」  力任せに黄金のレフティが手の中から引き抜かれ、いきなり俺の首根っこを掴む。 「ちょっ、加賀屋っ」  さっきまでへばっていたのに、そんなことを感じさせない腕力で、俺の顔を加賀屋にぐぐっと近づけた。 「笹良の元気、少し分けて」 「いや待て、もうかなり元気になってるだろ!」 「黙ってキスしろよ、早く」  ギリギリのラインで、加賀屋の腕の力が抜かれる。あとは俺から、目の前にある唇に触れればいいだけにされてしまった。 「しょうがないな……」  憧れてる加賀屋だからじゃなく、それなりに気になる存在だったし、こんなことで元気になるんだったらと考え、自分からキスをした。この間のように失敗せずに、加賀屋の存在をしっかり感じるキスになった。 「キス、うまくなってるじゃん」  ほんのりと唇に残る加賀屋の熱。それを逃したくなくて、少しだけ唇を噛みしめる。そんな心情を悟られないように、眉根を寄せながら口を開いた。 「あんな失敗は痛いし、もうしたくない」 「だけどもう少し、熱烈なのが良かったなぁ」  こんなところで、キスするだけでもヒヤヒヤものなのに、熱烈なんてそんなの――。 「加賀谷には空気を読むことと、羞恥心というものを自覚してほしい。ここは外なんだぞ!」  見るからにさっきよりも元気になったので、加賀屋の頭を膝から落としてやる。 「笹良のケチ。久しぶりに逢えたんだから、ちょっとくらいイチャイチャしたっていいじゃん」  落とされたまま、ブーたれた顔で他にも文句を言う加賀屋に呆れ果てたので、逃げるように立ち上がった。 「加賀屋を心配して損した。もう帰る!」 「待ってくれ。肩を貸してもらわなきゃ帰れない……」  加賀谷はコートに横たわった状態で、俺に向かって両腕を差し出す。 「は?」 「実は体力が底をついちゃって、動けなくなった」 「呆れた……。なにやってんだよ、本当に」  仕方なく加賀屋に肩を貸して、アパートに連れ帰ることになった。躰にかかる重さに辟易したけど、加賀屋と逢えなかったときよりも心が弾む――。

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