33 / 35

恋のマッチアップ番外編 膠着状態12

「エッチな俺は嫌?」 「俺は男だ、そんな対象じゃないだろ」  俺が喚くと、加賀屋は顔の前にある両手を力ずくで外した。まっすぐ注がれるまなざしに、うっと言葉を飲む。 「そんなの関係ない。だって笹良だから」 「でも……」 「笹良の全部を、俺のものにしたい」 「うぁ、そんな、の」 「このまま強引にしようと思えば、スムーズにコトを進められる。だけどそれをしたくない俺の気持ち、わかってくれよ」 「加賀屋……」 「俺のこと、気になってるんだろ?」 「ぅ、うん」  加賀屋に導かれるように、すんなりと答えてしまった。それは嘘偽りのない気持ちだったので、あっさり告げることができたのだが――。 「気になる俺に触れられるの、嫌か?」 「嫌……じゃなく、恥ずかしくて」 「俺も恥ずかしいよ。だけど笹良だから、全部見せられるんだ」 「加賀屋も?」  恐るおそる訊ねたら、加賀屋は満面の笑みを浮かべた。 「大好きな笹良に、俺のすべてをあげることができる。もらってくれないか?」  徐々に掠れる加賀屋の声を聞いただけで、なぜだかさっきよりも躰が熱くなった。触れられるだけじゃなく、見られることでも羞恥心を煽られていたのに、今はそれすらいいやと思えるようになった。  俺は喉を潤すべく、ごくんと飲み込んでから、意気込んでセリフを告げる。 「加賀屋になら、あげてもいい、よ……」  そう口にした瞬間に、加賀屋の両腕が痛みを感じるくらいに俺の体を強く抱きしめた。 「笹良を大事にしたいから、いきなりはしない。だから安心してくれ」  耳元で囁かれる声に、黙ったまま首を縦に振った。 「笹良、好きだよ」  甘い吐息と一緒にくちづけられたせいで、返事が宙に舞う。 (――俺もだって言いたかったのに、加賀屋のヤツはまったく)  抱かれる悦びに躰を震わせながら、加賀屋に身をまかせたのだった。

ともだちにシェアしよう!