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恋のマッチアップ番外編 膠着状態13

*** (ああもう笹良のヤツ、めちゃくちゃ可愛かったな――) 「ううっ、もぅ嫌だ……」  ふたり並んだベッドの上で、笹良は俺に背を向けたまま、他にもブツブツ文句を言い続ける。それに耳を傾けながら、優しく話しかけた。 「気にすることないって。俺しか知らないことだろ」 「気にするに決まってるだろ! 普段はこんなに早くないんだからな!!」  勢いよく起き上がりながら喚き散らした笹良の顔は、見たことのないくらいに赤く染まっていた。耳朶まで赤くなっていることに吹き出しそうになりつつ、にっこり微笑みながら口を開く。 「実際俺もイキそうだったし。ずげぇ気持ちよかったよな!」 「嘘つくなよ……。加賀屋のと俺のを擦り合わせて、ほんの数回だけだったのに。あんな短時間で、イキそうになるわけないだろ」 「ホントだって! 笹良のがビクビク震えて、びゅーってイったときの衝撃は、かなりの気持ちよさを感じた!」  恥ずかしさで俯く笹良を、ぎゅっと抱きしめる。素肌から伝わってくる熱が心地よかった。もう一度抱きたい衝動に駆られるくらいに――。 「加賀谷、今日はもうショックすぎて無理だから。その……腰に当たってる」 「しょうがないだろ。三擦り半でイった笹良が可愛くてつい」 「だからそれを言うなって。これ以上頭があがらなくなる……」  しょぼくれた笹良の頬に、触れるだけの優しいキスをした。 「だったらさ、次の機会で1分は持たせろよ」 「は?」  唐突に提案した言葉を聞いた笹良は、口を開けっぱなしにしながら、目の前にある顔を見つめる。呆けた笹良の視線を独り占めしていることに喜びを感じつつ、胸を張って説明した。 「今の現状、バスケでは笹良が優位に立ってるけど、ベッドの上だと俺が優位なわけ」  告げられた内容が否定できないセリフだったせいで、笹良の心情は大変複雑だったらしく、顔をしかめたままだった。 「バスケとコレを一緒にする、加賀屋の神経が信じられない」 「だってお互い向かい合ってるだろ。これって、マッチアップだと思うけどな」 「マッチアップ。こんな俺が加賀屋に評価されてるのか?」 「普段は、早くないんだろう?」  痛いところを絶妙なタイミングで突っ込んだ俺に、笹良は顎を引いて言葉を探す。 「は、早くない、と思うけど」 「実力を出し切るには俺ってば、すっげぇいいライバルで恋人だと思わないか?」

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