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恋のマッチアップ番外編 膠着状態14
抱きしめながら偉そうに胸を張り続けると、笹良は俺に冷凍庫並みに冷たい視線を送った。
「自画自賛するなんて、加賀谷らしい……」
「バスケもエッチも上手な俺のこと、笹良は意識しない?」
『好き』という言葉をあえて封印して、笹良が答えやすいように誘導する。そんな考えをあっさり見破っているだけに、笹良は素直に答えるのが悔しくてならなかった。
「どうだろうな……」
「気にすれよ」
意味深に微笑むなり、笹良の背中に触れていた手が、ゆっくり下りていく。背中から腰へ、そして――。
「ちょっと待てっ!」
リーチの長い俺の腕を、笹良は慌てて掴んで動きを止めた。
「さっきは、指2本しか入らなかったからな。あと1本増やして、次回は是非とも俺のを挿入できるように、少しでも馴らしておきたいなと思ってさ」
「2本でもヤバかったのに、これ以上俺の躰を改造しないでくれ……」
俺の腕を握る手の力を、笹良は視線を伏せながらぎゅっと込める。
「笹良、どんな感じでヤバかったんだ?」
動きを止められた腕をそのままに、笹良の耳元で囁きかけた。
「そりゃあ、裂けそうな感じというか」
「2本くらいで裂けるかよ。俺のを挿れるのに、あと何本必要かわかってるだろ?」
艶を帯びた声に、目の前で笹良はあくせくする。
「あと何本って、そんなの――」
「俺ので笹良の中を、めちゃくちゃにしたい。感じるところをごしごし擦って、俺のカタチを覚えさせながら、笹良を絶頂させたいんだ」
「絶頂っ、なに言ってんだ加賀屋……」
「イってるときの笹良、可愛いしエロいし、すっげぇ大好き」
わざと耳に吐息を吹きかけて、笹良を感じさせた。すると俺の腕を掴んでいた手の力があっという間に緩んだのをきっかけに、双丘を鷲掴みする。
「ひっ!?」
簡単に再燃した笹良の躰の事情を知ってるくせに、あえてそこには触れずに、ほどよく筋肉のついた双丘を優しく揉みしだいた。このまま流されてくれますようにという卑猥な想いを込めながら、ベッドの上で仕掛けた俺の行為に抗いたいのに、笹良は目を白黒させる。
「加賀谷、怖いんだ。すべてをあげたあとでおまえに捨てられたら、イップスを患った頃に戻ってしまうんじゃないかって。そうなったら絶対に立ち直れな――」
ありえない話を震える声で語る笹良に、言葉を奪うくちづけをした。自分の中にある想いを注ぎ込むようなそれに、笹良は黙って身を任せる。
暫しの深いくちづけのあと、バスケのプレイをするときの顔つきで、目の前にいる愛しい人を見つめた。
「笹良には、コートでボールを追いかけるように、俺のことも追いかけてほしいと思ってる。俺もこれから、おまえだけをそうやって想っていく。今回みたいに引きこもって、笹良を待ち伏せするような手の込んだことは、今後一切やらないつもりだ」
「……本当か?」
「この黄金のレフティを賭けてもいい。大好きな笹良に誓うよ」
にっこり微笑みながら左手を見せたら、笹良は右手でそれをぎゅっと掴み、不機嫌丸出しのまま手の甲にキスを落とした。
「笹良?」
「契約成立だよ、バカ加賀谷。スタメン入りできないおまえを、俺は待ってるからな!」
「言うじゃないか。試合中でも思い出しちゃうくらいのヤツを、笹良の躰に教えてやるよ!」
「いきなりやめろって、ほどほどにぃっ!」
笹良が抵抗する力をうまく使って、ふたり仲良くベッドの上に倒れ込む。慌てた笹良は逃げる余裕は当然なくて組み敷かれたが、加賀谷に捨てられるかもしれないという気持ちは、不思議とすっかりなくなっていた。
「加賀屋、好き……」
消え入りそうな笹良の声が加賀屋の耳に届いた瞬間、互いを引き寄せ合って強く抱きしめた。
コートだけじゃなくベッドでも、ふたりは譲らないマッチアップが続けられたのだった。
愛でたし♡愛でたし
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