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第1話 不審者から恋人へ <Side 真実

 (しゅう)と付き合い始めて、1年ほどが経った7月の初旬、気温は真夏。  ゲイの発展場として有名な公園で捕まえたオレ、於久(おく) 真実(まこと)の恋人、小佐田(おさだ) (しゅう)は、普段はもっさりとした冴えない格好をしているが、本体のクオリティは高い。  時代遅れの鼈甲メガネをリムフレームのスマートな物に変え、軽い化粧を施すだけで、誰もが振り返る美人に早変わりする。  化粧なんてしなくても、全然イケてるけど。  化粧品会社の開発部で働く柊は、商品の使用感を試す意味合いで、自分に施しているのだとオレは思っている。  俺は、絵を描くことが好きで、美大を目指したが不合格。  デザインに関われればと、アパレルの会社を受ければ、入社試験は合格したものの、営業職に就かされた。  綺麗な柊を見ていると、食指が動く。  絵を描くコトを趣味としている俺は、ヌードモデルをしてほしいと、柊に声を掛けた。  素直にセックスしたいと告げなかったオレ。  その1回の関係で終わってしまうのは、惜しいと感じたオレは、モデルという口実を元に、知り合いになるコトを目論んだ。  最初の頃は、不審者扱いをされた。  柊は、身バレするような財布もスマートフォンも何も持っていなかった。  オレの前で笑うコトも稀だった。  身体だけの関係が、しばらく続いた。  オレが絵を描かせてもらう代わりに、柊の欲求を解消するという関係だった。  恋人関係になれたのは、じりじりじわじわと心に侵入したオレに、柊が折れた形だ。 「やっぱり昼間は暑いな……」  肘ほどまで袖丈のある大きめのTシャツ姿の柊は、首許を摘まみ、ばふばふと風を送る。  大きめのシャツの裾から伸びる足は、すらりと長く、ぴったりとしたスキニージーンズが綺麗なラインを浮かべる。  首回りの緩いシャツが蠢く度に、オレのつけたキスマークが、鎖骨を彩る紅い痕が、ちらちらと覗く。  走らせる鉛筆が、しばしば止まってしまう。

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