「お前にも迷惑かけたし、お前の大事な人に浴衣のプレゼントでもするかって取りに行っていたんだよ」 　紙袋を受け取った育久は、中を覗く。 　箱に入っている浴衣のデザインは、わからないだろうが、育久は、ありがとうと小さく礼を紡いだ。 「浴衣エッチ、萌えるぞ。エロさ３割増し」 　手で数字の３を作り、にたりと笑んで見せるオレに、紙袋から視線を上げた育久は、親指を立てた。 　―― ひゅー……、ドォンっ… 「お、始まったな」 　オレと育久は連れ立って、愛しい人の元へと戻った。 　真っ暗な夜空に大輪の花が咲く。 　柊の元へと戻り、ミネラルウォーターを差し出した。 「ありがとう。綺麗だな」 　ペットポトルを手に、花火を見上げる柊は、小さく笑みを浮かべた。 　あっちはこっちに。 　こっちはそっちに。 　嫉妬に擦れ違い、筋違いに誤解され、勘違いに諦めて……。 　違いが、ややこしく交差し、色んな想いが入り交じった。 　こんがらがった糸がほどけた後には、幸せだけが、ぽつんと残る。 　そこに残っていたのは、オレの愛しい人の笑顔だけ。 　この笑顔をオレは、ずっと守る。 　笑顔だらけの毎日を、２人で一緒に過ごそうね。 【 E N D 】