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第九章・8
茉理、好きだよ。
突然の秀也の言葉に、茉理は驚き身じろいだ。
「茉理のおかげで、嫌なこと消せたよ。ありがとう」
「僕は何も……」
ただ、お兄ちゃんが。
元気のないお兄ちゃんを、励ましてあげたくって、それで。
「愛してるよ、茉理」
「お兄ちゃん」
そんな茉理が、大好きだ。
何の見返りも求めず、ただひたむきに俺を愛してくれる茉理が、大好きだ。
「もう一度、言って。お兄ちゃん」
「愛してるよ、茉理」
「もう一度」
「愛してる」
二人で、甘く熱いキスを交わした。
愛の言葉は、唇を塞ぎ合って封じ込めた。
この身体の中に、心の中に溶け込ませてしまうよう、しっかりと閉じ込めた。
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