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第十章・2

 そこで次の仕事だが、とタブレットを開く斎藤に、茉理は乗り出した。  秀也は、そんな弟を眺めながら、アイスティーを飲んでいる。 「秀也くん、他人事みたいにしてないで。君の仕事でもあるんだから」 「ええっ!?」  俺も、ですか!? 「オファーは、二人に来てるんだ。しばらくは、茉理くんに付き合ってもらうよ」  斎藤の話では、収録は次の土曜日だ。 「俺、その日は模試があるんですけど」 「そうか。まだ学生だったね」  ふむ、と斎藤は顎を撫でた。 「思いきって、休学したら?」 「休学!?」  うん、と斎藤は、それこそ他人事のように言う。 「勉強はいつでもできるけど、上昇気流に乗って芸能界で活躍できるのは今しかないよ」 「……」  ちら、と横目で茉理を見てみた。  うつむき、こぶしを握り、何かに耐えるような表情だ。 (茉理、ごめんな。また、俺のことで苦しんでる)  秀也は、眉根を寄せた。  そして、顔を上げた。

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