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第十章・3
「模試はキャンセルします。でも、休学の件は、少し考えさせてください」
「受けてくれるか。学校のことは、親御さんともよく話し合ってみてくれ」
何なら、私が話に加わっても構わない、とまで言ってくれる斎藤にはお礼を言ったが。
(親、二人で新婚旅行に行ってます。なんて言えないよなぁ……)
もう一度、茉理を見ると、彼の表情は少し和らいでいた。
「茉理、安心しろよ。しばらくは、一緒に行動しよう」
「兄さん、ごめんね」
あぁ、また謝る。
最近、茉理を謝らせてばかりだ。
少し暗い表情の茉理を励まそうと、秀也は斎藤に冗談を言った。
「斎藤さん、俺たちサインの練習とかしておかなくっていいんですか?」
「そうだな。早急に作ってもらうから、それを素早く書けるように練習してくれ」
(冗談が冗談にならない!)
それでも、茉理は笑顔になった。
それだけで、秀也は満足だった。
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