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第4話 飼い主はみんな親バカ
俺が刹と炎珠さんのペットになって二日目。
「那由太、笑って笑って」
「………」
今日もまた俺は炎珠さんの応援を受けながら、刹にカメラを構えられている。
だけど今日の撮影は写真ではなく動画。カメラに向かって自己紹介をしろと唐突に言われ、ソファに座った俺はうんざりしながら引き攣った笑みを浮かべた。
「那由太です。二十歳。炎珠さんと刹さんの猫としてお迎えしてもらって、今日が二日目になります」
カメラの後ろで、炎珠さんが画用紙に書いたカンペを俺に見せている。俺はその通りの台詞を言っている訳だけど、この動画の用途が分からないし乗り気でもないからほぼ棒読みだ。
「この服は、刹さんが着せてくれました。炎珠さんはいつも美味しいご飯を僕に食べさせてくれています。とっても大事にされていて、……な、な……那由太は」
「頑張って、那由太」
うう。もう、消えたいくらい恥ずかしい。
「那由太は、……すっごく幸せだニャー……」
炎珠さんが満足げに頷きながら、刹の背後で握った両手を顔の横に持ってきた。猫手ポーズを取れと言っているのだ。
「………」
弱々しく手の指を丸めて顔の横につけると、ようやく刹が俺からカメラを外してくれた。
「あああ、もう嫌だぁ……!」
ソファに倒れて足をばたつかせる俺を完全に無視して、二人が今撮ったばかりの動画をカメラで確認している。
昨日の写真撮影といい、この誰得な動画といい、一体何が目的なんだ。しかも昨日は刹の前であんな恥ずかしい格好をしたのに、報酬がクレープ屋の半額割引券だけだったんだぞ。
「表情が硬いのと棒読みは仕方ないとして、割と良く撮れてるんじゃない?」
「まあ素人っぽさが強い方が『二日目』って感じがして良いかもな」
「じゃあ後は何を撮る? 写真は足りてるの?」
「立ちポーズも必要だな。俺とお前と一緒に映ってるやつも」
……まだまだ俺の嫌な予感は続くらしい。
やるしかないと頭では分かっているけど、気持ちばかりはそう簡単に割り切れないのが人間てモノだ。せめて何のための撮影なのかを教えてもらえたら協力もできるのに、刹は全然教えてくれないし。
「じゃあ那由太。次は写真撮るから、これに着替えてそこの壁の前に立ってね」
ぴったりと肌に吸い付く、水着みたいな素材のTシャツとショートパンツ。水着みたいな、ではなく本当に水着なのかもしれない。何故なら下着も脱ぐように言われたからだ。ちなみに上下ともお馴染みのトラ柄で、パンツの方は尻の割れ目が見えるほど浅い造りになっている。
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