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第6話 発情期なんかじゃありません!・3

「わ、いい匂い。しかも可愛い!」  一階入り口近くにあったバス用品ショップ。パステルピンクとホワイトに彩られた店内は、いかにも炎珠さんの好きそうな可愛いもので溢れている。  ボディソープ、ボディジェル、バスバブルにソルト、シャンプーリンス等のヘアケア用品に香水やバスタオル、バスローブ等も売っている。全部全部がパステルカラーで、俺と刹は完全に場違いだ。 「いらっしゃいませ。プレゼントでお探しですか?」  しかも店内のお客さんが少ないせいで、俺達にも接客がついてしまった。勿論店員さんは悪くないけれど、出来ればそっとしておいて欲しかった……気もする。 「ミントの香りがするバスバブルってありますか?」 「はい、それでしたらこちらのジェルタイプの物が……」 「わ、ビンも可愛い。へえー、同じシリーズで色んな香りがあるんですね。全部揃えて置いておいたら可愛いだろうなぁ」 「アロマオイル配合ですので、お体に泡が付いたまま洗い流さずに拭いても大丈夫なんですよ」 「へぇー、ちなみにミントのはやっぱり、体がスースーする効果とかありますか?」  流石は炎珠さん、全然物怖じせず店員のお姉さんと盛り上がっている。ちなみにその間、俺と刹は店頭にあったソープのサンプルを端から匂いを嗅いで行き、「これは良い」「これはちょっと」と子供みたいなことをしていた。 「……炎珠さん、バスバブルの他にも長々と選んでますね。好きそうな物たくさんあるから仕方ないか」 「フラグを立てられたと思ったのかもしれねえな、これは」 「フラグ?」  刹が腕組みをして俺を見下ろし、唇の端を歪めて笑った。 「一緒に風呂入るフラグ」 「っ……、な、何でそうなるんですかっ?」 「墓穴を掘ったってことだ」  顔どころか体までが恥ずかしくて熱くなる。  自分から誘ったと思われただろうか。一緒にお風呂に入るって、三人で? それとも炎珠さんだけ? いやいや一緒に入ったって別にヤラシイ展開になると決まった訳じゃない。銭湯みたいなノリで、三人で背中流しっことか……そういうことも考えられるじゃないか。 「目が回ってるぞ、那由太」 「だ、だだだって刹が変なこと言うからっ……」 「ほれ、ラベンダーの匂いで落ち着け」 「はー、……すー、はー」  サンプルソープの香りを嗅ぐ俺は他人から見たら変態そのものだ。しかもそれに気付いた店員さんに「そちらの香り、気に入って頂けましたか?」と言われてしまった。 「ええ、あの、そうです。凄く良い匂いなので……買います」 「ありがとうございます!」 「……精神が不安定な奴だな」  そうして俺は刹に呆れられながら、店内で未だ目を輝かせている炎珠さんにラベンダーのソープをおねだりしに行ったのだった。  ……今日という日は、まだ始まったばかり。

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