46 / 114

第7話 にゃんタス記念日・5

「落ち着いた?」  炎珠さんの言葉に身を起こし、タオルを頬にあてながら頷く。 「はい、だいぶ復活しました。……それで、あの……もし良ければその、俺……」 「どうしようか、先にルームサービス頼んじゃう?」 「あの……」 「ん?」  そこから先が言い出せなくて、俺は握ったタオルを両手でくしゃくしゃと揉みながら俯いた。  駄目だ。とても俺から続きがしたいなんて言えない。だけどこのままだと炎珠さんは、きっと俺の体を気遣ってこれ以上何かしようとはしてこないだろう。  それなら、刹は──。 「………」  縋るような目を刹に向けると、鋭いその瞳が一瞬ふわりと柔らかくなった。 「那由太」  人差し指でちょいちょいと促され、刹の方へと顔を近付ける。同時に、視線を伏せた刹が俺の口元に耳を寄せてきた。内緒話をするみたいな恰好だ。 「………」 「分かるな?」  ──欲しけりゃ言葉で。刹はジェスチャーでそう言っている。  例え恥ずかしくても、言いにくくても、言葉にしなければ伝わらない。……いや、刹は何やら察してるみたいだけれど。 「……炎珠さん。刹。……」 「なに?」 「俺、……その、続き……」  カッカッと燃えるように顔が熱くなる。横では刹がニヤつきながらそんな俺を見ていて、ますます言葉が出てこなくなる。  ペットの合意無しに性行為をしてはならない。  だから俺が合意しない限り、二人はあれ以上のことはできないんだ。 「大丈夫。言っていいよ、那由太」 「あ、……」  炎珠さんが俺の頭を撫で、そのまま熱くなった頬も撫でてくれた。 「どうせ俺も炎珠もお前と同じ気持ちだし」  反対側から、刹が俺の頬を軽くつねる。  そんな二人の優しさに背中を押される形で……そして半ば自棄気味で。  俺ははっきり、二人の顔を交互に見て言った。 「俺、……二人とセックスしてみたいです」

ともだちにシェアしよう!