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第10話 ご主人の声には反応します、ネコです・5

「はぁ、もう幸嶋さん達に合わす顔がないけど戻らないと……」  風呂から上がって部屋着に着替えた俺は、バスタオルを頭から被ったままでリビングへ戻った。昼間、華深は幸嶋さんとイチャつくのを我慢してくれたというのに……留守番のヘルプを頼んでいる側の俺が、あんな現場を押さえられてしまうなんて。  もちろんあの二人のことだから、それで俺を批難することはない。全く気にしていなさそうでもあるし、華深はニコニコしていたし……。 「………」  リビングのソファで座っていた幸嶋さんが、ビールを飲みながら俺を見て「おう」と笑っている。その膝に頭を乗せて甘えている華深も、俺を見て「やあ」と笑った。 「な、何ですかその感じ。華深は何でニヤニヤしてるのさ」 「べつに~。那由太の可愛いところ見ちゃってきゅんきゅんして、色々めっちゃ言いたいことあるけど、栄治さんが『やめといてやれ』って言うから我慢してるところ~」 「……うん、よく分かったよ我慢してくれてありがとうね」 「そんなに気にすることないぞ那由太。飼い主に言われたことにちゃんと従った、お前は良いペットだ」  幸嶋さんにしれっと言われて、俺は思わずバスタオルで顔を隠してしまった。 「も……もしかして俺が電話してたのも知ってたんですか?」 「いや、そうだろうなと思っただけだ。俺達も会えなくなる時はよくやるしな」 「うん。俺達はビデオ通話がメインだけどね。電話エッチなんて古き良きカップルって感じで何だか燃えるじゃん!」  華深が幸嶋さんの腿に頬擦りしながら足をばたつかせた。からかっているのかと思ったけれどそうでもないらしく、華深は本気で嬉しそうに笑っている。 「那由太とご主人達がラブラブなのは嬉しいよね、栄治さん」 「ああ、那由太を紹介して良かったと心から思える瞬間だな」  ……どうやら気にしているのは俺だけのようだ。  俺はバスタオルを頭から外して自棄気味の笑顔を浮かべ、二人に向かってダイブした。 「うおっ?」 「わっ! なに、那由太!」 「俺も、幸嶋さんにご主人を紹介してもらって良かったです! 華深にも敢えて良かった!」  二人が俺をキャッチし損ねて、ソファの上で一番下になった幸嶋さんが「ぐふっ」と呻き声をあげる。 「わははは、痛い那由太っ!」  俺と幸嶋さんの間で潰れた華深が笑い、俺も可笑しくなって華深を強く抱きしめながら大笑いしてしまった。

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