84 / 114

第13話 海に行こうよ、ご主人!・2

 少し不安はあるものの、今年初めての海だ。ブログのネタもできたし、新しいメンバーにも会えるし、何より二人のご主人と一緒に夏の旅行なんて嬉しくて堪らない。  だからこそ、炎珠さんにも不要な心配なんてせず楽しんでもらいたいのだけれど。 「あ、あとは海で溺れる対策、サメ対策、……」 「炎珠」  俺と同じく呆れ顔の刹が、ブツブツと何かを呟く炎珠さんの肩を叩いて言った。 「対策ももちろん必要だが、そんなに根を詰めてると逆に那由太がお前の心配をしちまうぞ」 「うう……心配してもし足りないのに……」 「炎珠さん、俺と一緒に浮き輪に捕まってプカプカしましょう! そんで冷たいジュース飲んで、シュノーケリングしましょう!」 「シュノーケリング……」  炎珠さんの目がきらきらと輝き始める。もう一押しだ。 「そうですよ、海の中すっごく可愛い魚がいっぱいいますよ! 炎珠さんが好きな人魚の童話の世界が広がってるはずです。絶対『可愛い』ですよ!」 「……行く!」  よし。 「ところで幸次郎さんとペットの涼真さんていうのは、どういう人なの?」  訊ねると、刹がスマホに映った画像を俺の方へ向けて見せてくれた。  画像の中には今風のイケメンが二人。弾ける笑顔の爽やかな茶髪青年と、少し照れ臭そうに笑っている黒髪青年。黒髪の方は少し刹と雰囲気が似ているけれど、その穏やかな笑い方を見れば優しい人なんだろうなというのが伝わってくる。 「どっちがご主人なんですか?」 「茶髪の方が幸次郎だよ。涼真はこっちの黒髪クールね」 「涼真は何のペットだと思う、にゃん太」 「えっ、何だろ難しいな……」  見た感じスレンダーでクールだから、ヒョウとかチーターとかのスタイリッシュなイメージだけど…… 「正解は、カラスだ」 「えっ、カラス! 意外!」  まさかの鳥類、そしてカラスだとは驚きだ。確かにこのスタイリッシュな美しさは、じっとしている時の賢そうなカラスっぽくもあるけれど。 「しかもこの二人は幼馴染なんだよ。PdMCに登録する時はどっちがペットになるか揉めたらしいけど、結局涼真が折れたって」 「ええ……! 幼馴染なのにわざわざそんな関係になることもあるんですか……」 「変わった二人だけど良い奴なのは確かだからさ。涼真もきっと那由太の良いお兄さんになってくれるよ」  カラスの涼真さんと、そのご主人の幸次郎さん。幼馴染の二人──  PdMCには謎がいっぱいだ。

ともだちにシェアしよう!