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第13話 海に行こうよ、ご主人!

 七月十日  今日は、ご主人の炎珠さんと刹と一緒に公園で花火をしました。小学校の頃以来だったから楽しかったです。刹が写真を撮ってくれたので、見てみて下さい。  七月十一日  今日は、朝からアイスを食べて、クーラーの部屋で昼寝をしたら、少しお腹が痛くなりました。炎珠さんがお腹をさすってくれて、刹が薬をくれました。夜には治っていたので良かったです。 「……俺って、本当に文才がない……」  PdMC用のブログを今月から書き始めたは良いものの、まるで小学生の夏休みの日記だ。他のペットの人達は自分でイラストを乗せたり、レイアウトを工夫していたり、特に何もない一日でも自分の思ったことを丁寧に書いていたりと、読み応えのあるものが多いというのに。 「華深のブログなんてずっとハイテンションで、読んでて楽しいもんなぁ」  華深らしい文体と幸嶋さんへの愛に溢れた、ハッピーなブログ。そのくせに七夕の日の記事には「栄治さんがずっと笑っていてくれますように」なんて、ちょっとしんみりするお願い事を書いていたり。 「ブログって難しいなぁ……子供の頃から日記もいつも三日坊主だったし」  だけどこれも俺の「仕事」の一つ、書かない訳にはいかない。 「イベントがあった日はすんなり書けるけど、何もしてない日もなるべく更新しろって言うし……正直に書いたら『朝起きてご飯を食べて夜寝ました』が三日くらい続いちゃいそうだな……」 「那由太、ブログ頑張ってる?」 「い、一応頑張ってます。でもあんまり見ないで下さいね、文章書くの苦手だから、恥ずかしくて……」  炎珠さんが後ろからパソコン画面を覗き込んで言った。 「書くことがない時は、ポエムみたいなのでもいいんじゃない? そういうの書いてる子もいるよ」 「ポ、ポエムなんてもっと書けませんよ。それこそ才能が必要じゃないですか」 「俺はそういう方が得意だけどなぁ」  キーボードに両手を乗せたまま思案していると、黙ってスマホを見ていた刹が画面上に何かを発見したらしく「お」と目を丸くさせた。 「炎珠。幸次郎とペットの涼真が『二泊三日で海に行くけど一緒に行かねえか』って」 「う、海っ? 行きたい行きたい! 炎珠さん行きましょう!」 「海かぁ……幸次郎さん達ならいいけど、那由太の裸を見られるのはちょっとなぁ……」  まだそんなことを言っているのか、と思わず脱力してしまう。炎珠さんと刹以外に、こんな貧相な体を見て誰が欲情するというのだろう。 「炎珠さん。俺、海行きたいです。PdMCのメンバーさんが来るなら尚更会いたいですし」 「那由太がそう言うなら……。日焼け対策と、熱中症対策と、痴漢対策と、ナンパ、盗撮、誘拐、……全部対策を考えておかないと……」 「日焼けと熱中症以外はそんなに対策必要ないような……」

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