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第147話
開票率が70パーセント、80パーセントになっているであろう時間帯になっても、ボードには何も記されなかった。
いつもは温厚な後援会会長が、腕組みをし、深い息を吐いている。
「接戦ですって」「ええっ、接戦っ?」「昔みたいにいかなくなったわねえ」「まあずいぶん頑張った方だとは思うけど」
後ろの方で、ひそひそ声で話すおばさんたち。
もし落選したら、このひとたちの期待を裏切ることになるのだ。事務所内を見回して思う。これだけのひとに支えてもらってきたのだ。もし落選したら、失望、落胆、嘲り……あらゆる負の感情を受け止めなければならないのだ。亨が、ひとりで。
駄目だ、そんなの駄目だ。絶対駄目だ。
諦めムードが漂い始めると、さっきまで気弱だったのを棚に上げて、まだ終わっていないじゃないかと反論したくなる。
ピリリリ、と携帯の音が響く。
「あと二、三分で選管から確定が出るそうです」
二、三分?
あと二、三分で決まる? すべてが決まる? 終わる?
いつの間に二、三分、になっているんだ。
けれど、二、三分、と言われてからは、まるで一時間のようにも二時間のようにも感じられた。
スマホから、選管のホームページにさっきから何回もアクセスしている。けれど進捗は0パーセントから動かない。一体何のための速報だ、と焦れ、更新ボタンを押したとき、画面がパッと切り替わった。
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