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第146話

 ピリリリ、と、選対本部長の携帯が鳴るのが怖かった。次に電話が鳴ったとき。そのときいよいよ、逆転されてしまうんじゃないか。  一発大逆転の人生なんてありえない。  でも悪い方で逆転されてしまうことは大いにある、と思っている。  駄目だ。悪いことを考えたら、悪いことを引き寄せてしまう。  開票率が50パーセントになった。  選対本部長の携帯が鳴る。「うん、うん……で?」と、今までと違うトーンで声を潜めている。電話を切ったあと、「何だかよく分からないらしいんだよなあ」と彼はぼやいた。  分からない……分からない、って、何が?  教えてほしくてしかたないが、朱莉が口を挟めるような雰囲気ではない。代わりにベテラン秘書が「どういうことですか」と食ってかかっていたが、「分からないもんは分からないんだよ!」と返り討ちにあっている。とにかく、よくない状況なのだろう、ということは分かった。さっきまでは団らんしていたひとたちも、口を閉ざし、事務所は静まり返っている。つけっぱなしにしていたテレビからは天気予報が流れ、「明日は雨でしょう」とお天気お姉さんが明るい声で言うのを、その場にいたおそらく全員が聞いた。

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