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嗜虐と恍惚と、屈辱と 2
チュ・・・っと軽い音を立てる。珀英の額がいつもより熱い。
「おやすみ。ちゃんと暖かくして寝ろよ」
「あ・・・はい・・・おやすみなさい」
想定外のことに珀英は言葉を失って、呆然(ぼうぜん)とした表情でそれだけ言うと、玄関を開けて出ようとして。
振り向いた。
びっくりして思わず身構えると、珀英は片手でオレの頭を引き寄せて、お返しと言わんばかりに、頬にキスをする。
頬が熱い。珀英の熱い吐息が耳にかかるくらい近づく。
「ちゃんと治して、ちゃんと抱きにくるから待ってて」
耳元で囁かれて、ぞくぞくと背筋に甘い痺(しび)れが走る。熱い息がかかって、腰が疼(うず)く。こんなことされたら、今すぐして欲しいと思ってしまう。
「ば・・・っかじゃねぇの!」
「くすくす、お休みなさい」
珀英の胸を押し返したオレの手を、ふんわりと優しく掴んで、珀英は手の甲にキスをして玄関を閉めた。
『ちゃんと抱きにくるから待ってて』
珀英の言葉を思い出す。
「本当に・・・早く治せよな」
珀英の口唇が触れた、頬が手が、熱かった。
*
熱が下がらない。
緋音さんの家から急遽(きゅうきょ)帰宅して、軽くシャワーだけ浴びて、加湿器つけて厚手の布団でさっさと寝たのだが。
翌朝起きても熱は下がるところか上がっていて。オレは事務所に電話して取りあえず動けないことを伝えた。
声も掠(かす)れて、咳もくしゃみも止まらないので、2〜3日は仕事は無理だと伝え、スケジュールを変更してもらった。
緋音さんからもLINEが入っていたので、現状を少し軽めに伝えて心配しなくて大丈夫だと返信しておいた。
あーーー熱なんか何年ぶりだろう。
高校?大学生の時か?忘れるくらい前だなー。あーご飯食べなきゃ・・・冷凍ご飯と卵でおじやでも作るか・・・あー汗だくでパジャマ気持ち悪い。
とりあえずベットに起き上がる。
上も下もわからないくらいの眩暈(めまい)に襲われる。
ベットに倒れ込むと全てを諦(あきら)めた。こりゃダメだ・・・立ち上がるのも無理・・・ああああでもトイレ・・・トイレだけは!!
這ってベットから下りて、そのままトイレへ向かう。1LDKのたいして広くない部屋なので、冷たい廊下を這ってほどなくトイレに到着する。
壁とかドアとか捕まって何とか立ち上がって、何とか便座に座る。
眩暈がなかなか治まらず、立ったり座ったりするだけで一仕事だ。
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