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第2話 呪い
美しく冷たい理を天使は扱ってきた。
長い長い間。
天使に外見と年令は関係ない。
まだ幼さの残るような少年のような面影をその冷たい瞳が裏切る。
天使は裁くことを仕事にしてきた。
今日もまた、人間を裁いた。禁忌にふれた人間に罪をあたえる
実の兄を愛した妹。
妹を愛した兄。
二人はとうとう身体を重ねあわせたのだった。
天使はその二人の前に姿をあらわした。
裁くために。
呪いを与えるために。
二人の姿を変えた。
兄は翼のある化け物に妹は尾びれのある化け物に。
空と海。
二人は二度と交わらない世界て生きていく。
化け物になったことではなく、引き裂かれたことに泣くふたりを置いて天使は飛び立った。
その心は何にも動かない。
だが、その日、激しい嵐となった。
天使の翼でも飛び続けるのは不可能だ。
天界まで戻るのを諦めた。
山の洞窟で一夜を過ごすことにした。
だが、そこには先客がいた。
同じ翼を持ってはいても、闇の翼を持つ化け物だった。
火に当たっていた。
翼はあっても、天界には住めない地を這いずる生き物だ。
天使は無視することにした。
だが、話しかけてきたのは化け物だった。
「火に当たれよ」
化け物は面白そうに言った。
天使に話しかける化け物など珍しい。
天使は化け物を排除するものだからだ。
今日はたまたま疲れていたから見逃すだけだと言うのに。
でも、確かに濡れた身体を乾かしたくて、天使は火の側にいく。
化け物は闇のように黒くそして美しかった。
化け物に美しいとは。
天使はすぐに考えを修正した。
化け物は呪われた身であるくせに、快活だった。
その理由はすぐにわかった。
洞窟の奥に卵の殻が見えたからだ。
化け物は一人で生まれ、一人で死ぬ。
死ぬ前に卵を産むものもいる。
その卵だろう。
生まれたての化け物。
ここから疎まれ憎まれ孤独に生きていくことをまだ知らないのだ。
呪われた存在であることも。
だから平気て天使に声をかけるのた。
愚かな。
天使はおかしくなって笑った。
化け物は天使をまぶそうに見つめた。
その視線に天使は戸惑う。
「綺麗だな、あんた」
化け物が素直に言った。
化け物は無邪気に天使に手を伸ばした。
悪意も敵意もないので、思わずよけられなかった。
天使は他者の体温を知らない。
天使が他人に触れることがないからだ。
触れることは堕落につながるから。
化け物の肌は温かった。
「あんた冷たい、冷えてるのか」
化け物は心配そうに囁いた。
化け物として生まれる化け物は生まれた時から全ての知識を備えている。
知らないのは自分がこの世界でどの位置にいるのかだけだ。
人間から化け物になったモノならば、自分が呪われた存在であることを知っているのに、この化け物は知らない。
だから人の心配などできるのだ。
だから、天使を心配して温めようと抱き寄せた。
天使は呆然とその体温を受けいれていた。
憎しみも恨みも呪いもまだ知らない化け物は暖かい。
化け物は天使の肌や髪をまぶしそうに見つめ、優しく触れた。
「あんた綺麗だ」
天使はその声に何故か震えた。
天使も化け物が綺麗だと思ってしまったから
二人て黙って抱き合う。
触れた肌から温もりが伝わることに天使は怯えた。
それが甘すぎて。
化け物の逞しい胸に耳を押し当てられ、その心臓が強い鼓動を打っているのを、聞き、天使の胸も速く打ちはじめる。
髪を綺麗だと撫でられた。
その指の感触に身体がふるえてしまう。
首筋を撫でる指が甘く感じる。
体温が包みこみ、心臓の音に心が震える。
化け物が戸惑ったように言った。
「あんたを抱きしめてたら、なんか俺の身体がおかしい」
堅くなったものを無邪気に擦りつけられた。
天使のモノに。
そして、こすりつけ、化け物は初めての感覚に喘ぐ。
天使も喘いだ。
そう、天使もおかしくなっていたから。
化け物は戸惑うようにこすりつけてくる。
気持ちが良い。
天使もそれに応えて腰をふる。
二人は喘ぎあった。
天使と化け物は夢中でそこを擦り付け合った。
天使がの堅く勃ちあがったそこが最初に弾け、それでもこすりつけることをやめない化け物に天使は泣いた。
そして化け物も迸らせた。
二人は見つめ合う。
そして、服を脱ぎ捨てあった。
化け物の身体は逞しく、美しく。
天使の華奢な身体を包みこんでしまう。
知識のない化け物に知識を与えたのは天使だった。
これはいけないと思っているのに、化け物の無邪気な瞳と、暖かい身体に堕落した。
欲しいと思ってしまったのは、天使だった。
何百年、何千年、知らなかった体温に狂う。
舐めて、と強請り、自分から尻を開き、穴を差し出す。
でも、舌まで差し込まれたのは想定外外で、天使は泣いた。
泣いても嬉しそうに化け物はさらに、奥までなめるのだ。
また迸らせてしまったら、その性器まで舐められ、天使は声をあげ、身体をそらせて耐えるしかなかった。
愚かな人間のように肉欲に溺れた。
指で広げられ、挿れて欲しいとすすり泣く。
化け物はまぶしそうに天使を見つめ、ゆっくり天使の中に沈んできた。
「あんた綺麗だ」
涙が滲む目尻を舐められ、瞳を覗きこまれる。
美しい闇色の瞳。
闇色の肌。
闇色の髪。
化け物こそが美しかった。
呪われた存在?
何が?
どうして?
天使にはもうわからなかった。
化け物が満たす身体だけが全て。
重みと体温を両腕で抱きしめる。
「もっと」
そう叫ぶしかないくらい、何もかもが、欲しかった。
化け物が愛しげに呻いた。
中を大きくかき混ぜられ、つま先がそりかえる。
襞を裏返しに鳴るんじゃないかと思うくらい、引き出され、押し入れられることをくりかえされ、泣き叫べば、驚いてとまられ、止まるな、と怒鳴った。
謝られ、恥ずかしさに泣き、化け物の肩を噛む。
化け物の顔がクシャクシャになる。
笑っているのだ。
腹を立てて、顔を背けたら、顎をつかんで顔を引き戻され、唇を塞がれた。
生まれたての化け物に、それがキスと知らないキスをされた。
自分から舌を絡めたのは天使だ。
知識でしか知らなかったキスは、罪で。
罪な分だけ甘かった。
腰をぶつけられ、激しく擦られる甘さも天使は知る。
おかしくなるところを知られ、そこばかり狙われ、天使はまた泣いた。
でも、もう化け物は止めてくれなくて。
化け物が天使の中に放った時、もう天使は気絶寸前だった。
熱さを感じ、天使も化け物と叫びあった。
手足を絡め合い、溶け合うよう。
そして、それは起こった。
白い翼が根元から千切れた。
脚がとけて変化していく。
長く伸び、ウロコが生えていく。
それは蛇の下半身。
天使は理を破ったから、化け物になったのだ。
もう天界には帰れない。
呪いだった。
天使が嘆くより早く、無邪気な化け物が言った。
「あんた綺麗だ。羽根もいいけど、尾も素敵だ」
化け物はうっとりと、天使の白く長い尾に口づける。
天使は思わず笑った。この化け物には呪いさえ、呪いでないのか。
「それに俺には翼があるからあんたはまだ飛べる」
抜け落ちた翼を見て、化け物は言った。
化け物は笑顔で言う。
何も知らない。
何も知らない化け物。
呪いも憎しみも罰さえも。
天使はため息をつき、そして笑う。
いや、化け物の思う通りこれは呪いではないのかもしれない。
「それに私はお前を連れて地の底にいけるな」
天使、いや、今は蛇が言った。
化け物は楽しそうに頷いた
化け物は天使の新しい下半身を撫で、舐めまわし、その下半身にある2つの切り込みを見つけだした。
切り込みの中には一つには男のペニス。
そして、もう一つには女のような穴があった。
2つの切り込みを化け物は舐めて愛し、男のペニスは勃ち上がり、女の穴は濡れていく。
「脚もいいけど、あんたの新しい尾、好き」
化け物が交互に穴とペニスを舐めつづけるから、天使、いや、今は蛇は泣きながら懇願するしかなかった。
「挿れて」と。
そして、確かに新しい下半身は。
凄まじい快楽を与えてくれた。
尾をまきつけ、化け物と絡まり合う。
深く深く。
もっと深く。
呪われた身になることの甘さ。
堕天は暖かく甘く、優しかった。
「もっと」
そう叫ぶほどに。
「幸せだな」
化け物は笑顔で言う。
何も知らない。
何も知らない化け物。
呪いも憎しみも罰さえも。
天使だった蛇はため息をつき、そして笑う。
いや、化け物の思う通りこれは呪いではないのかもしれない。
「幸せだな」
蛇も言った。
化け物は笑って頷いた。
天使が姿を変えた兄と妹はそれでも水面で愛を交わす。
空と水の境目で。
天使だった蛇と翼ある化け物は、空と地を行き交う。
呪いなど無力だと、天使だった蛇は悟り、無邪気な恋人とキスを交わす
おわり
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