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第18話
「え?あ、何で……?」
「何が?」
「な、何で、俺がそこで働いてるって……」
「あれ、最初に言わなかった?持ち物見たよって。社員証が一緒に入ってた。」
成程、と理解するよりも目の前に社長のご子息がいて、ご子息の前で会社の闇みたいなことを話してしまった。いや、それだけじゃない。俺はこの人とあんなことを……!
「クビだ……退職願いを出す前にクビだぁ……」
項垂れた俺を、凪さんは困惑しながら励ましてくる。
「クビになって訴えられる……。オメガが息子を誑かしてって言われるんだ……」
「いや、そんなこと親父は言わないから。」
「そんな保証ないです……」
「あるって。だってうちの母さんはオメガだよ。そんなことを真樹に言うってことは、母さんに対してもそう思ってるってことになる。うちの両親は仲がいいし、母さんを貶すような言葉を親父は言わない。」
実際に凪さんのご両親と話したことはないからなんとも言えない。
社長──元い凪さんのお父様は遠い所からしか見たことがないし。
そう言えば会社で凪さんを見た事もない。別のところで働いてるんだろうか。
だとしたらこの三日間は完全に家にいて俺に付き添ってくれたから、多大なる迷惑を大勢の人に掛けていることになる。
「凪さんのお仕事は?」
「親父の下で一応幹部だよ。」
「……知らなかったぁ」
今のたった数分で寿命が縮んだ気がする。
いくら自分父親の会社でも、急に三日も休めば大変に違いない。凪さんだけでなく、その周りも部下の人達も。
「謝りに行きます」
「その必要は無いよ」
「迷惑しか掛けてないです」
「いや、それどころか喜ばれてる。俺がアラサー独身だから周りから心配されててね、両親にはいずれ番になる人に出会ったって伝えたんだ。……あ、勝手なことをして申し訳ない。」
「……キュンキュンしました」
いずれ番になる人……そんな風に言ってもらえるなんて幸せだ。
まだオメガ性を受け入れられていないことを考えれば、ちょっと複雑だけど。
「凪さん素敵」
「ありがとう」
「あの……撫でてもらっていいですか。」
「あはは、いいよ。おいで」
悲しんだり驚いたりキュンキュンしたり。色々忙しかった気持ちが、彼に撫でられると落ち着く。
「真樹は可愛いな。外に出したくないよ。もし外に出て誰かに攫われたりしたらどうしよう……。ああ、不安になってきた。」
「大袈裟です」
「大袈裟じゃない。かすり傷一つ作ってほしくない」
「っ!い、いたた、ちょっと、力が強いです……!」
急に抱きしめられ、その強さに驚いた。
もしかして凪さんは大分と心配性なのかもしれない。
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