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第27話
お風呂から上がり、水を飲んで寝る支度をする。
「今日は別で寝よう」
「え……」
俺用にと与えられた部屋にはベッドがあったから、ここで寝る時もあるんだろうなと薄ら感じていた。
でも、今日は当たり前のように彼と眠るつもりだったから寂しい。
「……そんな顔しないでくれ」
「だって……」
「今日一緒に寝れば、多分、我慢できないから。真樹を傷付けたくないんだよ」
それは俺を抱きたいって事だろうか。何だかもう凪さんになら良い気がする。でもいざするとなった時に拒否するなんてことしたくないから、本当に覚悟が決まるまでは伝えない。
「わかりました。じゃあ俺、部屋で寝ます。」
「うん。ごめんね」
「俺の方こそごめんなさい。おやすみなさい。」
部屋に入りベッドに腰かける。
ポスンと横に倒れて、明日のことを考える。
明日、凪さんはお仕事で少しの間居なくなる。
その時間、俺はどうしていよう。
布団の中に潜り込み、鼻下まで隠す。
掃除と洗濯ならできるけど、他はさっぱりダメだし、掃除と洗濯すら完璧に出来ないかもしれない。こだわりのある人だっているし、勝手にするのは迷惑かな。
ああダメだ。また悪い癖。
何も考えずに早く眠ればいいのに、何かを考えずには居られなかった。
***
「……寝れない」
零時まで頑張って耐えたけど、もう限界。
眠れないのも苦痛だ。
ベッドから起きて、静かにトイレに行く。
どこの電気ももう消えていて真っ暗だ。
勝手にお酒を飲むのはいけない気がして、気分転換をしようとベランダに続くドアを開けて、外に出る。
肌寒い風が気持ちいい。そうしてそこから外を見下ろす。
ポツポツとある光が眩しいとすら思えた。
しばらくそうしていると、部屋から音が聞こえてきて振り返る。
「真樹?──真樹ッ!」
名前を呼ばれて返事をしようとしたのと同時、強い力で引き寄せられ凪さんの腕の中に閉じ込められていた。
「な、凪さん……?」
彼の心臓が忙しなく動いている。
力が強くて顔を上げることも出来ず、彼の腕の中でもがいていた。
「真樹、やめてくれ。大丈夫だから。俺が傍にいるから。」
「え、え……?」
「また、飛び降りようとしてたんだろ……」
「いや、違います!!」
慌てて否定する。
彼は疑わしそうに俺を見ているけど、月の光が反射して彼の切れ長の目が怖い。
逃げるように視線を逸らして、開けっ放しのドアを見つける。
「とりあえず、あの……ドア閉めます。」
「俺がやるから、ここに座って。」
「……はい」
少し雰囲気の怖い彼。
ソファーに座るように言われ、大人しく従った。
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