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第28話

ドアを閉め、電気を点けた彼は俺の隣に座りギュムギュムと抱き締めてくる。 「あの、凪さん、話を……」 「待って。安心させて」 「あ、は、はい……。」 そんなに俺が飛び降りそうに見えたのだろうか。 眠れないから、気分転換にと思ってベランダに出ただけなのに。 でも、彼に抱き締められていると急に眠たくなってくる。この体温が良いみたい。 「……眠れなかった?」 ぼんやりしていると、そう聞かれて頷いた。 考えてしまって、どうしても眠れない。 「気分転換しようと思って、ベランダに出ました。死のうとは思ってませんよ。」 「うん。安心した」 「ごめんなさい。勝手にお酒を飲むのはどうかと思って。」 「飲んでくれていいよ。でも……眠れないから酒を飲むっていうのは体には悪いから、別の方法を考えようか。」 ウトウトしだして、彼にもたれ掛かる。 髪を梳かれると、もう本当に落ちてしまいそうだ。 「ん……こうしてて……」 「ん?」 「眠い……」 額にキスをされた気がする。 その感覚を最後に眠りに落ちた。 *** いい匂い。俺の好きな落ち着く匂い。 程よく効いた空調のおかげで気持ちがいい。 「ん……」 寝返りをうつと傍にあった熱が離れて、慌てて元に戻った。顔をぐりぐりと埋めるとクスクス笑い声が聞こえてくる。 薄目を開けて顔を上げると、凪さんが穏やかに微笑んでいた。 「おはよう真樹。もう起きる?まだ六時前だけど」 「……」 嫌だ。もう少しこのままがいい。その思いながらまた彼の胸に顔を埋める。 「まだ眠いね。」 「凪さん、ギュッてして……」 「うん」 背中に回った手にギュッとされると、すごく安心する。 「俺はそろそろ起きようと思うんだけど……」 「……嫌ですぅ」 「朝は弱いのかな」 そう言われてハッとし、勢いよく起きた。 凪さんは驚いていて、俺も驚いている。 「……ごめんなさい。寝惚けてました」 「可愛いね」 髪を撫でられて、その感覚で寝癖があることに気が付いて掛け布団を頭に被った。 「何してるの?」 「寝癖がついてて恥ずかしいです」 「なんだ、そんなこと。」 「俺あんまり、自分の間抜けな姿を見られたくないんです……。」 「間抜けとは思わないけど。それより、ぐっすり眠れた?」 頷いて返事をする。 彼は良かったと言って微笑み、布団の上から俺の頭を撫でたかと思うと、すぐに動き出して「ご飯にしよう」と部屋を出ていってしまう。 慌てて追いかけようとして、寝癖がついているのを思い出し、洗面所に駆け込んだ。 髪を水で濡らして、跳ねているのを押える。 いくらか見た目がマシになったのを確認して、リビングに移動した。

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