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第59話

「やっ、ちょっと、待って……っ!」 「何を待つの」 「まだ真昼間!」 思った以上に大声が出た。凪さんは驚いて目をぱちぱちさせている。 昨日俺を抱いたことで、もう我慢の箍が外れてしまっているのか、簡単に襲おうとする。 「真樹が煽ったのに」 「一回繋がったからって、いきなりそんなに何度もしません!俺にも恥じらいっていうものがあります!」 「……ごめん」 「……せめて、夜にしてください。」 我慢ばかりさせて申し訳ないけど、やっぱり恥ずかしいし腰はまだ全快したわけじゃないから許してほしい。 「うん。じゃあ今夜抱くね」 「……そういう事じゃないんですけど……」 「明日も休みだから、安心だね。」 「何も安心できません」 「好きだよ、真樹。」 「好きって言えば俺が何でも許すと思ってるでしょ」 「だって許してくれる」 そんな笑顔で言われると否定もしにくい。 小さく溜息を吐くと、凪さんは苦笑して俺の頭を撫でた。 「幸せ逃げちゃうよ」 「放っといてください」 俺の上から退いた彼は、そっと俺を座らせると「ごめんね」と言って手を繋ぐ。 「映画でも見る?」 「……見る」 凪さんに選ばせてもらい、コメディ映画をつけてテレビ画面を眺める。 「コメディ映画が好きなの?」 「明るい内容のものが好きです。」 誰かと一緒に見て、笑ったり映画が終わったあとに『ここが良かった』と言い合ったりしたい。 そんな記憶は今までに一度も無い。きっと凪さんなら付き合ってくれるだろうと思う。 映画が進むにつれ、面白さが加速してくすくす笑う。 隣に座る凪さんは、画面を見ることなく俺を見ていて、視線が気になって隣を見れば、頬を撫でられる。 いや、映画を見てください。 「……俺ばかり見ないで。」 「可愛くて」 「映画面白いのに。後で感想聞きますからね」 「わかった」 ようやく真面目に映画を見てくれるようになった彼。 なのに今度は俺が凪さんはどんな反応をしているんだろうと気になって、チラチラ横顔を盗み見ていた。

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