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第89話

*** 夜遅くに眠ったせいで、翌日はいつもより遅く目を覚ました。 「真樹、まだ起きない?」 「……」 「あれ、寝た?」 起きたくなくて開けた目を閉じる。 布団を頭まで被った。 「朝ご飯にホットサンド焼いたよ」 「……ホットサンド」 「うん。結構美味しくできたと思うんだけど、食べる?」 「食べる」 モゾモゾ動いて漸く体を起こした俺に「おはよう」と声を掛けてくれる。寝癖を見られることはもう慣れたので、頭を隠しはしない。 「おはようございます……」 「眠そうだね」 「遅くまで起きてたから眠いです。凪さんは?眠くないの?」 「うん。真樹とどこか出かけたいなぁって思ってる」 「どこ行くの?」 「悩み中」 髪を優しく梳かれる。 「寝癖ついてる?」 「うん。ちょっと跳ねてる」 「……凪さん、直してぇ……」 「いいよ。洗面所行く?」 「うん」 ベッドから抜けて、洗面所に寄る。 寝癖を直してもらって、それからリビングに行くと席に座っているように言われ、その通りにした。 「お待たせ」 「いい匂い」 「飲み物は?コーヒーにする?」 「うん。でも、凪さんも飲む?」 「飲むよ。ちょっと待っててね。あ、食べていていいからね。」 「はーい。いただきます!」 手を合わせてホットサンドに齧り付く。 美味しい!戻ってきた凪さんにそう伝えると嬉しそうに笑って「よかった」といいながら、コーヒーをくれる。 「ありがとうございます」 「どういたしまして。どこか行きたいところない?」 「んー……」 普段からどこかに出かけるってことがなかったから、思いつく所がない。 「映画館とか行ったことある?」 「いや、無いですね。気になったのはDVDを借りて家で観てました。」 「観にいってみる?」 「何か面白いのありますか?」 「調べてみるよ」 スマートフォンで検索をかける彼を見ながら、コーヒーを飲んだ。

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