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第90話

「凪さんは映画観に行ったりするんですか?」 「いや、俺もいつも家で見るかな。」 「……じゃあ家で観ましょうよ。映画館だとくっついてられないでしょ?」 「……くっついていたいの?」 「うん」 凪さんに触っていると落ち着く。 何かあっても大丈夫だっていう漠然とした安心感がある。 「じゃあ家で観るか。……でもどこかに出かけたいな」 「なら……あ、ショッピングは?」 「いいね。ちょっと遠出して大きなショッピングセンターにでも行こうか」 「行く!」 コーヒーを飲み終えて、空いた皿と一緒にカップをキッチンに運ぶ。皿洗いをして水切りに置き、リビングに戻った。 まだスマートフォンを見ている凪さんの膝の上に、背中を向けてちょこんと座ってみる。 「どうしたの?」 「何見てるの?」 「どこのショッピングセンターにするか悩んでる。どっちが真樹の好きな店が多い?」 「別に好きな店とかないけど……。気に入った物があれば買ってました。」 拘りないからなぁ、と言うとお腹に手が回って抱き寄せられる。 「真樹」 「何?」 「キスしたい」 「……唐突ですね」 「項が見えて」 「項……あぁ、痕?これ見て嬉しくなったの?」 凪さんが恥ずかしげに頷く。 可愛く見えて、くるっと上半身を捻り彼の首に腕を回してキスをした。 「満足した?」 「……真樹はどうしてそんなに可愛いんだろうね」 「凪さんが俺の事を好きすぎるから、そう見えるんでしょ?」 「わあ、すごく納得した。」 「……自分で言って恥ずかしかったから納得しないで」 顔が熱い。恥ずかしい。 「出かける準備してくる」 膝から降りて服を着替えに部屋に行く。 自分のベッドに倒れ込んで、少しの間顔に集まった熱を冷ました。 服を着替えて、ポケットに財布を突っ込む。 手持ちがあまりないから、何か買う時はカードでいいか。わざわざ銀行に寄ってもらうのも気が引ける。 洗面所に行って歯を磨き、準備できたところでリビングに戻る。 「凪さーん!準備できた!」 「うん。行こうか」 「はい!」 つけていた部屋の電気を消して、二人で外に出た。

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