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第115話

名前を呼ばれ意識が浮上した。 目を開けると目元が濡れていて、慌てて手で拭う。 「大丈夫?」 「……おはようございます」 「うん。泣いてるけど、怖い夢でも見た?」 「いえ、大丈夫です。」 体を起こして深く息を吐く。 心臓がいつもよりうるさい。 「真樹、凄く汗かいてるから、ご飯の前にシャワー浴びておいで。」 「……うん」 「体調悪い?立てそう?」 「大丈夫。ごめんなさい」 着替えを持ってお風呂場にいく。 暖かいお湯を浴びて、泣きそうになる。 前のような怖い夢じゃなかった。内容は同じだけれど、今回は悲しかった。 コンコン、とドアがノックされる。 スリガラス越しに彼の姿が見えた。 「凪さん?どうしたの?」 「ごめん、早く行かないと行けなくなった。ご飯はテーブルに置いてるから食べて。後でまた連絡するね」 「わかりました。行ってらっしゃい」 行ってきます、と言ってドアから離れる彼。 また一緒にご飯を食べ損ねた。 お風呂から出て、髪を乾かすのもそこそこにリビングに行きご飯を食べる。 「いただきます」 昼も一人だし……夜ご飯、今日こそ一緒に食べないと。 「よし、仕事!」 空になった食器を片付け、しっかりと髪を乾かし服を着替えてパソコンを用意する。 始業時間の九時になるまで、まだまだ時間がある。 珈琲をいれて、スマートフォンを弄る。 突然手に持っていたそれが震えて、メッセージが届いたことを知らせてきた。 「……三森」 差出人は三森で、メッセージを読んで手が震える。 どうして彼は、ここまで俺を陥れようとするんだろう。 内容は俺のトラウマについてだった。 ずっとそれに関しての嫌な夢を見ていたから、タイミングが偶然にも一致していて気持ちが悪い。 どうやら、高校も大学も俺と同じだった同級生に声を掛けているらしい。 そこから中学まで遡り、俺とあのオメガの子の事件に辿り着いたようだ。 どうやって調べたのか、事件について詳しく書かれてある。 もしかすると、あのオメガの子に直接聞いたのかもしれない。 「う……」 『被害者面してるみたいだけど、お前も同じだ。』 最後にそう書かれてあって、吐き気に襲われ口を手で覆った。 あいつはどうして、こんなことをするんだ。 一体、俺にどうしてほしいんだ。 三森の目的がわからなくて、ただただ不安が膨らんでいく。

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