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第124話

一緒にお風呂に入り、朝ご飯を食べてすぐに仕事に行ってしまった彼を見送って、時間になるまでぼんやりしていると凪さんからメッセージが送られてきた。 「えぇ……」 内容は今日はゆっくり休んで、との事。 理由には昨日無理させてしまったから、ともう一つ、俺が思い詰めてしまうから、と書かれてあった。 確かに、少し気持ちに余裕がなかったと思う。 申し訳なさはあるけれど、正直有難い。 今日は何をしよう。 本を読んで過ごすのもいいかもしれない。 映画を見たり、ただ何もせずにゆっくりと過ごすのも一つの手かも。 そう思ったけれどどれもしっくり来ない。 というのも、凪さんと出会う前までの休日は寝て過ごすだけだったから。 「……散歩とか、行きたいな。」 外出を禁止されているわけじゃないから、ちょっと外に出かけてもいいかもしれない。 ずっと家にいるし、気分転換にいいかも。 服を着替えて外に出る。 朝の気持ちいい空気を胸いっぱいに吸った。 一応凪さんにメッセージを入れた。 少し外に出て散歩をしてくると。 少し歩いて繁華街に出て、コーヒーショップに入り二人席に座る。 滅多に頼まないキャラメルマキアートという甘い飲み物を飲んで、ごくごく飲むと美味しさに驚いた。 「……」 これ凪さん作れるのかな。 家でも飲みたいな。 そう思っていると、空いていた前の席の椅子が引かれた。 顔を上げると、知らない人がいて首を傾げる。 「相席、いいですか。」 「え……」 平日の朝。 空いている席は多くて、相席なんてする必要は無い筈なのに。 知らない人、確かにそうだ。そのはず。 けれど、どこか見たことがあるような気がするのはどうしてだろう。 「堂山真樹さん、ですよね。」 「……どなたですか?」 中性的な男性。 ちらりと見える首にはチョーカーが着いている。 彼の性別がオメガだということがわかって、少し戸惑いが薄れた。 「僕のこと、分かりませんか?」 「……」 ニッコリ、柔らかく笑う男性。 多分会ったことのない人。 申し訳ないと思いながら、首を小さく左右に振ると、彼の表情が変わる。 「助けて、真樹君。」 「──っ!」 思わず悲鳴を上げそうになって口を手で覆った。 今、俺を睨みつけてくる目はあの時と同じものだ。 「久しぶり。中学の時以来だね。」 さっきまでは柔らかかった笑顔も、今ではそうは見えない。 「今、大変なことになってるらしいね。僕のところに変な奴らが来て、警察に通報するか悩んだよ。」 怯える俺に構うことなく、彼はそう言って飲み物を飲んだ。

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