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第139話

重たい。 俺の上でぐっすり眠る凪さん。 俺よりもずっと高い背に、それに比例して体重もある彼にずっと乗られているとやっぱり重たい。 「凪さーん……」 名前を呼んで、背中をポンポン叩く。 「凪さん起きて。俺が潰れる」 返事は無い。どうやら熟睡しているらしい。 少し悩んで、彼の下から抜け出すことにした。 よいしょ、と上半身を起こしずるずるとゆっくり体を動かす。 胸に乗っていた頭がお腹に乗って、滅多にない体勢にぎゅっと頭を抱きしめる。 「凪さーん、起きて」 「……起きてるよ」 「あれ、起きてた。」 「そりゃあ真樹があれだけ動けば起きる」 手を離すと、体を起こした彼が小さく欠伸を零した。 「重かったよね。ごめん」 「重かったけど謝らなくていいよ。滅多にない事だし。」 そう言うと、ぐぇっと声が出るほど強く抱きしめられた。 とりあえず離してもらって、珈琲を飲もうとキッチンに立つ。 「俺がやるから真樹は座ってて」 もしかして凪さんは俺が珈琲すらもいれられないと思っているのだろうか。 さすがにそれを失敗したことは無いんだけど。 「珈琲くらいいれれますけど」 「うん、知ってる。」 「じゃあ凪さんが座って待ってて」 「膝を貸してもらったお礼」 「……それくらいでお礼されちゃ、俺は何を返したらいいのか分からないよ。」 色々助けてくれて、愛情を沢山注いでくれている彼に俺は何を返せるんだろう。 これ以上ないくらいの幸せを彼に感じてもらわないと、同じだけを返せているとは思わない。 「真樹が居るだけで幸せだよ。だから何も要らない。」 「俺が何かをあげたいの」 「一番初めに『真樹』を貰った。それ以上に欲しいものは無い。だから俺がお返ししてるだけ。」 凪さんは優しく微笑んで、不意に背中を屈め触れるだけのキスをしてくる。 「俺の可愛い番さん。珈琲をいれるから、座って待っててくれる?」 「うん。待ってる」 そんな言い方はずるいと思う。 即答して踵を返しリビングに行き、テーブルの席に座って彼と彼のいれる珈琲を待つ。 「お待たせ。」 「……俺やっぱり凪さんが好き」 待っている間、どうして俺の番はこんなにも優しくて素敵な人なんだろうと考えていると、その気持ちが爆発して口から勝手に言葉が溢れていた。 「俺も真樹が好きだ。──ああまずいな、好きが止まらないってこういうことを言うんだな。」 「凪さんらしからぬ発言」 「本当のことだから仕方ない」 凪さんに飛びつきたい気持ちを抑えて珈琲を飲む。 彼に「美味しい」と笑いかけると、額に手を当てて項垂れていた。

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