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第152話

──ピンポーン 軽快な音が部屋に鳴り響く。 三森は舌打ちを零すと、俺をじっと見る。 「絶対に声を出すな。わかったな」 「……わ、かった……」 そう言って玄関に向かう三森を目で追いかけた。 声を出すことは簡単で、ここに来た誰かに『助けて』と伝えれば多分、全てが収まる。 けれど、そうする事で三森から何をされるかがわからない。今すぐ誰かが助けてくれる保証も無い。 視界が涙で滲んで、嗚咽を零しそうになった時、玄関先が騒がしくなった。 何やら言い合いをしているみたいだ。 けれどその内幾つもの足音が聞こえてきて、部屋に来た知らない男性が俺を見下ろして声を上げる。 「保護しろ」 男性の傍に居た数人の人が、俺の拘束を解いていく。 何が起こっているのかわからずにぼんやりしていると、凪さんがやって来て俺を抱き締めた。 「ごめん。遅くなった」 「……なにが、おこって……」 「おい嘉陽。とりあえず恋人連れてここから出ろ。話すのはその後だ。もしあいつが暴れたら面倒臭い。」 「わかった。」 凪さんに抱かれ、外に出る。 空はもう暗くなっていた。 「パトカーいっぱいある。あの人達は警察?」 「ああ。真樹には後で話すけど……計画していた案の最悪なパターンになった。」 「最悪なパターン」 「後で話すよ。それより……首。これ……苦しかったな。」 凪さんの車の後部席に運ばれ、そっと首に触られる。 苦しかったことを思い出して、胸が締め付けられるような痛みに襲われる。 思わず凪さんの手を叩いて、首を左右に振った。 「首、触らないで」 「……ごめん。真樹、これで顔隠して。ここでちょっと休んでて」 凪さんの羽織っていたジャケットを預かり、言われた通りに顔を隠す。 バクバクしていた心臓が彼の香りを匂ったおかげで落ち着いていく。 「ロックはかけてあるから、俺が戻ってくるまでここから動かないでね。」 「……うん」 凪さんが外に出て、鍵を閉める。 後部席に寝転んで音を遮断しようと耳を手で塞いだ。 そのままどれくらい時間が経ったのか、ロックが解除された音が小さく聞こえて体を起こした。 「真樹、お待たせ。家に帰るよ。」 「……三森は?」 「あとは警察側が対応してくれる。三森が何かをしていた証拠は、あの部屋に十分ある。」 「……警察の人、凪さんを嘉陽って呼んでた。」 「高校の頃の同級生。名前は守屋(もりや)。明日家に話に来る事になってる。」 車が動き出し、マンションに向かう。 三森をどうにかするのに、色々準備をしていたのに、思っていた以上にあっさりと終わった。 全てが終わったら安心出来るはずなのに、実感が無い。それどころか未だに不安が残っている。

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