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第183話 蒼太と洋哉

そうして外食を済ませ、帰路に着く。 お腹いっぱいになったことと、お酒も飲んだことで気分がいい。 知らない間にまた手を繋いで歩いているのも、なんだか心地良かった。 「家まで送るよ。」 「大丈夫だよ。一人で帰れる。ヒロくんの家は反対方向でしょ?」 「でも蒼太の顔、お酒のせいでほんのり赤くなってるから、変な奴らに声掛けられるかもしれないよ。俺は嫌だな、そういうの。」 「ん、じゃあ、家まで送ってくれる?」 「もちろん、喜んで。」 駅まで歩いて、いつもの電車に乗る。 空いている席に座ると眠気が襲ってきて、頭がカクンカクンと揺れた。 あと一駅、と言ったところでパッと目を覚ます。 駅を確認しようと視線を彷徨わせていると「大丈夫?」と声を掛けられて驚いた。 「ヒロくん……ぁ、そっか。送ってくれてるんだ」 「うん。気持ちよさそうに寝てたけど……。まだ寝惚けてる?」 「ごめんね、もう起きた。」 「よかった。もう着くから寝ちゃだめだよ」 「うん」 ふわふわ欠伸をして、次に着いた駅で降りる。 手を引かれながら改札を通り、家まで向かう間は特に話はしなかった。 「蒼太、大丈夫?」 「うん。……星、全然見えないね。」 「星?見たいの?」 「夜にたまに空を見た時に、星が見えるとちょっと嬉しくない?」 「うーん。それはわからないな。あんまり興味が無い」 「そっか」 部屋の鍵をヒロくんに渡して、ドアを開けてもらっている最中、空を眺めていると酔っていると思われたのが心配されてしまった。 部屋に入り、手を洗ってリビングの床に座る。 「蒼太、大丈夫そう?これ、水飲んでおいで。もし明日体調悪かったら困るだろうし」 「ありがとう」 コップに水を入れて持ってきてくれた彼。有難くいただいて、コップを空にした。 「じゃあ俺は帰るね。お風呂入るなら気を付けるんだよ」 「何から何まで、ありがとうございます。ヒロくんも気を付けて帰ってね。」 「うん。あ、ねえ蒼太」 「んー?」 隣に座った彼が、突然顔を近づけてくる。 驚いて目を見張ると、ぎゅっと手を握られた。 「キスしてもいい……?」 「っ!」 「あ、まだ早い?」 「……ぅ、ううん、早く、ない……」 そう言いつつも、心臓はドキドキとうるさく音を立て始めた。 視線を下げていると、頬を撫でられ、どんどん顔が近づいてきて、ギュッと目を瞑り息を止める。 ちゅ、と微かに唇同士が触れて、すぐに離れた。 思わずヒロくんの手を握る力が強くなってしまう。 顔が離れてゆっくり目を開けると、ヒロくんの顔が真っ赤になっていた。 それにつられて、僕も顔がぐっと熱くなる。 「あ、ありがとうございます。」 「……いえ、あの、こちらこそ。」 何故かお礼を言われて、僕も言い返す。 何だこれ、と思いながらも胸の中は幸せで満たされていた。

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