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第186話 蒼太と洋哉
キスが深くなる。息が出来なくて、そういえば鼻ですると言っていたことを思い出した。
けれど、思い出しても上手く出来なくて、結局ヒロくんの胸をトントンと叩けば、すぐに唇が離れる。
「っふ、ぁ、はぁ……く、苦しい……」
「鼻でするの難しい?」
「ん、だって、キスで精一杯……」
「じゃあ練習する?」
「練習?」
返事をする前に、ヒロくんがまた唇を重ねてきた。
口を開けると舌が口内に入ってきて、ねっとりと舌を擦り合わせる。
「ふっ、ぅ……」
さっきよりゆっくりな動きに少しだけ余裕が出来た。
薄く目を開けながら鼻で呼吸をしてみると、ヒロくんも目を開けて優しく笑っている。
「っは、はぁ……」
「ん、上手だね」
「う……でも、ゆっくりじゃないとダメかも。いっぱいいっぱいになっちゃう。」
「それは少しずつ慣れていこうね」
「うん」
少し先に進んだ。それが嬉しくて自然と笑みが浮かぶ。
「何笑ってるの?」
「なんか、嬉しくて。」
「嬉しい?」
「うん。ちょっと、進めた。」
そのまま甘えるように彼の肩に頬をつけた。
そうすると優しく抱きしめてくれる。
「俺とこうしてキスしたり、触れ合ったりしたかったんだ?」
「したかった。けど、初めてでわからないし、嫌がられたら悲しいから、言わないようにしてた。それに……エッチな夢を見たなんて言ったら、引かれると思うでしょう?」
「じゃあ夢じゃなくて現実でしようか」
「えっ!?」
驚いて大きな声が出た。
彼はくすくす笑って、「まだ早い?」と聞いてくる。
「ぁ、えっ、と……」
「ごめんごめん。調子に乗った。ゆっくりね」
「……うん。ありがとう」
夢が現実になるのは、まだもう少し先。
でも、そんなに遠くは無いだろうなと、ヒロくんを見ていて思う。
「ヒロくん」
「んー?」
「好きだよ。」
そう言うと、彼は目をぱちくりとさせた。
「え……。ぁ、お、俺も好き。わぁ……不意打ちの効果が凄い」
「……何言ってるの?」
「ごめん、こっちの話。」
優しくて、いつも僕のペースでいてくれるところも、少し変な所も、全部全部、大好きだ。
END
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