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side 怜  なんて美しい寝顔なんでしょう…。  きっと、この方の血は、この上なく上品な味がするはず――。  私は美しい女性が眠っているベッドの横にそっと跪き、目の前に見える白い首筋に唇を寄せ、鋭い牙を立てると、彼女の血をゆっくり頂きました。  あぁ、思った通り、極上の味です。  しばらくの間、その女性の血を堪能した後、小さな寝息を立てている彼女の、美しい寝顔を見つめていました。  本当に美しい――  そう思いながら、女性の頬に手を添えると、彼女の瞼がピクリと動きました。そして、女性がゆっくりと目を覚ましていきます。  大体の女性はこういう時、私の口元に付いている血を見て、悲鳴をあげて逃げようとします。 けれども、このごろの女性は強くなったもので、パっと起き上がって、護身用に置いてあるバットで殴ろうとしたり、鳩尾に蹴りを加えようとする方もいました。  でも、私は長い間、吸血鬼をやっています。軽い身のこなしでその場を去りますから、今まで一度も、殴られてその場に倒れ込んだ、なんて事ありません。  さて、今私が血を頂いた女性は、いったいどんな反応をするのでしょう? 少し楽しみです。  おや? 彼女が、私を発見しましたが、一度瞬きしただけで、また目を閉じようとしています。眠くて仕方が無いのか、それとも、夢の中の出来事だと思っているのかもしれません。  それでしたら、もう少しの間、魅力的な彼女の血をわけて頂きましょう。  さて、彼女がまた寝息を立て始めましたよ…。 「ちょっとさぁ、痛いんだけど」  彼女の首筋に噛み付くと、彼女が不機嫌そうな声を上げました。  おやおや、起きてしまいましたね。でも、ここで、怒らせてはいけません。私は顔を上げてから、柔らかく微笑み、彼女を見つめました。 「すみませんお嬢さん、もう少し我慢していて下さい。これでおしまいにしますから」  彼女は私の言葉を聞くと、眉間に皺を寄せ私を睨みました。 「もう少しって、何してんのさ」 「はい、少しだけあなた様の血を頂いているのです」 「は? あんた、蚊か何かなわけ?」  頭を掻きながら、彼女が聞きました。 「いえ、これでも吸血鬼ですよ」  そう答えた私に、彼女が驚いた顔をしました。でも、何かで殴ろうとか、叫ぶとか、そういう事はしないようです。  それにしても…キレイな顔をされているのに、言葉使いがかなり乱れていますね。会話をすると、イメージが全然違います。 「はー? 吸血鬼ね。道理で変な服着てるわけだよな。今時居ないぜ、そんなタキシードにマントみたいな格好って。ハロウィンの準備にしては季節外れじゃねーの……」 「私だって、いつもこのような服装しているわけではないですよ。今日は、ちょっとこういう気分だったので…」 「ふーん。まあ、どうでも良いんだけど。それよりさぁ、もう明るいじゃん。太陽の光とか大丈夫なんだっけ? 吸血鬼ってさ」 「そうですね、どのように説明してさしあげれば良いでしょうか。簡単に申しますと、様々なタイプの吸血鬼がいると思ってくださればわかり易いかと。わたくしも、以前はダメでしたが、現在の私は、太陽の光には何の影響を受けなくなりました。少しづつ体質も変わって来ている感じがします。進化しているとでも言うのでしょうか…」 「ふーん。じゃ、十字架とかも平気なわけ? ニンニクは?」  女性が身を乗り出して聞いてきました。長年吸血鬼をやっておりますが、このようなタイプの女性には出会ったことがなかったので、私は面食らってしまいました。 「苦手なものは個体によってそれぞれ違います。今ここで、苦手なものをお教えする訳にはいきませんけど――」

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