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side 怜  そして、さくちゃんと一緒に暮らすようになって、3日目、さくちゃんが寝室でお休みになっている間に、初めて1人で掃除と洗濯をすることになりました。 さくちゃんは夜のお仕事なので、昼間は殆ど休まれています。その間に私が掃除をしたり、洗濯をするのです。  まず、洗濯機を回しながら、掃除をする事に致しました。  掃除機という道具はとても不思議です、落ちているゴミをどんどん吸いとってくれて、部屋の中がたちまちキレイになって行きます。  私は、以前一緒に暮らしていた女性達がやっていたのを思い出しながら、部屋の隅から隅まで掃除していきました。でも、さくちゃんが寝ているベッドルームだけは、さくちゃんが夜出かけてから掃除することにします。疲れて眠っているのに起こしてしまっては可愛そうですから。  居間に掃除機をかけていると外で大きな音がしたので、ビックリしてよそ見してしまったのですが、その時、急にズボッという音がした後、掃除機がシュウシュウと音をたてるだけで、ゴミを吸い込まなくなってしまいました。  何が起きたのか、どうしたら良いのか全くわかりませんでしたし、これ以上、壊してしまってはいけないと思い、とりあえず、掃除機をかけるのはやめておきました。 ですが、綺麗にしないといけないと思い、仕方が無いので、雑巾を濡らして、窓や家具を拭く事にしました。  そのうち、洗濯が終わったという知らせが聞こえてきました。洗濯物を籠に入れて、ベランダに出て洗濯物を干します。  とても良いお天気なので、今日は洗濯物も気持ちよく乾くことでしょう。洗濯物を干す作業は、思ったよりも簡単でした。ハンガーに服を掛けて、ポールに干せば良いのですから。  慣れない作業なので、掃除と洗濯でお昼過ぎまでかかってしまいました。少しお腹が空いてきました…。  そう言えば、朝から何も食べていなかったのです。  吸血鬼とは言え、いつも血ばかりを頂いているわけでもありません。吸血行動は月に1度だけなのです。それ以外は人間と同じように食事をします。月に1度なんて、女性の生理のようですかね?  キッチンに行って、冷蔵庫を覗いてみると、『怜』って紙が貼ってある袋と、『さくら』っ紙が貼ってあるコンビニの袋が入っていました。  袋の中には、何種類か食べ物が入っていました。私の袋のほうにトマトジュースがやけに多いのは、さくちゃんが気を使ってくれたのでしょう。  さくちゃんは、言葉遣いはあまり良くないのですが、とっても優しい人なのです。たくさんの人間を見てきた私には、よくわかります。  テーブルにつき、私はトマトジュースの缶の蓋を開けました。 「いただきます。さくちゃん」 .

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