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side 怜  さくらちゃんがブルッと震えてから、頬を真っ赤に染めました。 「…ったく。耳元で言うなよ…すっげー感じちゃったじゃないか」  小さな声で、照れたように言いました。その後さくらちゃんは、黙って考えていました。 「あのさ…怜。今、すぐには答えられないや。でも、俺は怜とずっと一緒に居たい。それだけはわかって…。 怜の身体が元に戻るかどうか、わかる頃になったら、きっと答えが出てると思う。だから…」  しばらく考え込んでいたさくちゃんが、困ったような顔をしながら言いました。 「そうですよね…。私達の生活は、これから始まるんですものね…」 「うん…。今、ハッキリしてるのは、怜のこと、すごく愛してるって事だよ」 「私もです…」  そうです…まだ、答えを急ぐ必要はありません。とにかく、さくらちゃんと私は、これから共に歩んでいこうと考えているのです。  だから…半年後に、もう一度2人で話し合ってみることにしましょう。  それから4時間後、もう戻れない…と思っていた、さくらちゃんのマンションに帰ってきました。 「ただいま…」  玄関を開けて、2人で部屋に入りました。 私はカーテンと窓を開けて、部屋の空気を入れ替えました。 さくらちゃんは、ベランダに出て、夕日で赤く染まった、街を眺めています。 「怜…」 「何ですか?」 「こっち来て」  手荷物を片付けていた私は、荷物をソファーに置いて、ベランダに出ました。 さくらちゃんの隣りに並ぶと、さくらちゃんが私の手をギュッと握り締めました。 「これからもずっと、こうやって俺の隣りに居てくれよ」  そう言って、さくらちゃんが私の目を見つめています。頬が赤いのは、夕日のせいなのか、この雰囲気のせいなのか、私にはわかりませんでした。  しばらく街を眺めた後、手を繋いだまま、部屋に入ると、急にさくらちゃんが手を離し、私の正面に来ると首に腕を回してきました。 「なぁ、荷物は明日着く予定だし、急いでやる事ないだろ? だからー」  さくらちゃんが、ニッコリ微笑むと、熱い熱いキスを仕掛けてきました。 「やろうよ? 怜…俺達の愛の巣で」  2人で寝室に雪崩れ込み、貪るように愛し合いました。 先生のお宅では、一応気にしていたのでしょう、今日のさくらちゃんの声は、いつも以上に甘くて熱くて、そして、絶え間なくて…何度でも抱きたいと思ってしまうほどでした。  何度目かの行為の後、急にさくらちゃんが私の体をベッドに押し倒し、体の上に跨って、私の顔を覗き込んで来ました。 「なぁ、怜…この先、何があったとしても…いつも俺の傍にいてくれる?」  さくらちゃんの頬を両手で優しく挟んで、顔を近づけます。 「はい…いつでもあなたの傍にいますよ…このさきずっと…」  言葉の続きは、さくらちゃんの唇に飲み込まれていきました。   どんな事があっても、私は、あなたの傍を離れませんよ。   明るい朝の光の中、目覚めた時はいつもあなたの隣りに居たい…。 :::::::: 「まぁ、どうされたんれすか?」  道端でうずくまっていた私に声をかけてきたのは、とても美しい女性でした。 お酒に酔っているようで、呂律が回っていませんでしたが――。 「ちょっと気分が悪くて」  そう答えた私に、その女性は親切にも私を家にあげてくれました。  血に飢えていた私は、夜の街で血をわけてもらえそうな女性を探していたのです。 「あれ、お嬢さん?」  私が玄関で靴をそろえている間に、彼女は部屋に入って行ってしまったのです。 そして、彼女を探して部屋に入ると、その女性は既にベッドで寝息をたてて眠っていました。  私はその時、その方を女性だと思っていました。そして、その後に起こることが、私の人生を変えてしまうだなんて、思ってもいませんでした――。 おわり。

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