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第21話 口移しで飲ませて欲しい?
目を開けると、ぼんやりした視界に、見覚えの無い天井が映った。
「目が覚めた?」
はっとして声のする方を見ると、彰が首にタオルを巻いた格好で、ペットボトルの水を飲んでいた。どうやら、ここはホテルの部屋で、奴はシャワーを浴びた後らしい。
「その辺にしておけって、いくら言っても聞かずに飲み続けるから……。君、酔うと泣き上戸になるんだね。挙句には、パタッと眠り込んじゃって。もう仕方ないから、部屋を取ったよ」
――そういえば、彰を相手に初恋の話をしていたんだっけ。随分ぺらぺら喋ってしまった気がする……。
「――悪い、迷惑かけたな」
さすがに申し訳なく思い、俺は謝った。
「タクシー代と部屋代、必ず払うから。あっ、それから、食事と酒代もな。自分の分は出す」
「昴太って、変なところで律儀だよね」
彰が苦笑する。俺は身を起こそうとしたが、飲み過ぎたせいか、身体が思うように動かなかった。
「なあ、彰。俺にも、水くれないか?」
彰は軽く頷くと、ペットボトルを持って近づいて来た。その瞬間、信じられないことが起きた。奴は、水を口に含んで、俺に口づけたのだ。
「んっ……」
彰の唇は熱いのに、流れ込んでくる水は冷たくて気持ち良かった。条件反射的にごくりと飲みこんだ後、俺は奴をはねのけた。
「何すんだ!」
「水をくれって言うから。口移しで飲ませて欲しいって意味じゃないの?」
いけしゃあしゃあとほざく彰を睨み付けると、俺は奴からペットボトルを奪い取った。そのまま、一気に飲み干す。
「ふーっ」
やっと一息つき、冷静になった俺は、ふと部屋を見渡してぎょっとした。
――ダブルルームじゃねえか。
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