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第22話 それもこれも全部含めて、好きだよ
「お前、まさか……」
「ダブルしか空いてないって言われたから」
彰がけろりと言う。
「だからって、何でお前まで泊まるんだよ……」
「もう電車無いもの。それとも、僕の家までのタクシー代、払ってくれるの? こうなったのは、君が酔い潰れたせいだって、分かってる?」
「うっ」
今日だけで結構な出費になるのだ。それはきつかった。目を白黒させている俺を見て、彰はくすりと笑うと、ベッドの端に腰掛けた。
「昴太。君が好きだよ」
唐突に、彰は言った。茶色がかった瞳でまじまじと見つめられて、俺はドキリとした。
「今日は君の色んな話を聞かせてもらったけど、それもこれも全部含めて、君のことが好きになったから……」
「ちょっ、ちょっと、待て!」
――この状況。この告白。それってつまり……。
うろたえている俺を見て、彰はプッと吹き出した。
「安心して。今日は何もしないから」
――今日は?
「昴太のことが大切だから、弱っている時につけ込むような真似はしたくないんだよ。それじゃあ、文月九段と同じになってしまう」
「彰……」
「だから、君の方から僕を求めてくれるようになるまで、待つから」
「はあっ?」
彰のとんでもない台詞に、俺はかあっと頬を熱くした。
「俺がお前を求めるだって? ありえねえから!」
「ハイハイ。取りあえず、もう寝よう? 僕、明日早いんだよね。というわけで、何もしないから、さっさとベッドを詰めてもらえる?」
――何か、引っかかる気もするけど。でもまあ、仕方ないか。今日は散々世話になったし……。
俺は黙って、彰の分のスペースを空けた。奴は大人しくベッドに入ってきたが、それも束の間だった。ぴったりと密着されて、俺はぎょっとした。
「近い!」
「狭いんだから、我慢して」
――そんなに狭くないだろ。
そう思ったが、言い返さなかった。彰の体温が、意外にも心地良かったからだ。
――何か、こういうの、久しぶりだな。
次第にうとうとする意識の中で、俺はぼんやり思った。
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