23 / 168

第23話 一緒に暮らしている者だけど

 週明け、俺は彰のマンションへと向かっていた。金を借りっぱなしにしておくのは、気持ちが悪かったからだ。彰は、いつでもいいと言ってくれたが、俺の気が済まなかったのだ。 「でけーマンション」  彰から教えられた住所にたどり着いた俺は、思わず目を見張った。すでに実家を出ているとは聞いていたが、こんな立派な所に住んでいるとは、思ってもみなかった。俺の安アパートとは、雲泥の差である。 「やっぱ、お坊ちゃんなんだろうな」  改めて納得した俺は、思わず一人、頷いていた。  時計を見ると、七時半だった。彰に今日行くと言ったら、七時には帰ると言っていたから、もう家にいるはずだ。オートロックのインターフォンを押すと、案の定返事が返って来た。 「俺、風間だけど」  しばらくして、エントランスが開いた。部屋の前まで来て、再びインターフォンを押す。ドアはすぐに開いた。しかし、出て来た人物を見て、俺は一瞬固まった。  現れたのは、見知らぬ青年だったのだ。年齢は、俺より少し若いくらいか。肌が抜けるように白く、体つきは華奢でほっそりしている。顔立ちも細面で、神経質そうな印象だ。 「ええと……。あなたは?」  まさか部屋を間違えたのだろうかと不安に思いながら、俺は尋ねた。すると青年は、フンと鼻を鳴らした。 「人に尋ねる前に、まず自分が名乗るのが筋じゃない?」  棘のある言い方にややむっとしたものの、言われてみればその通りだ。 「風間昴太といいますが……。彰とは、一緒に仕事をしています」 「風間……昴太?」  青年は、ちょっと眉を吊り上げて、俺の名を復唱した。 「彰ならまだ帰ってませんけど。一体、何の御用ですか」 「彰に、金を返しに来たんです。あの、あなたは……」 「僕は、彰と一緒に暮らしている者だけど」  俺の言葉を遮って、青年は答えた。 「それより、金って何ですか? あなたは、仕事仲間に借金をするようなだらしない人間なんですか? 風間昴太さん」  ――何だよ。何で初対面の人間に、そこまで言われないといけないんだよ……。  厭味ったらしい口調に、俺はかっと怒りを覚えた。  

ともだちにシェアしよう!