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第27話

どうしてもと譲らない運転席を諦めて 久しぶりに貴方の車の助手席に座る。 「疲れたら言って下さいね?」 「はいはい。本当に心配性だなぁ。」 苦笑いしながら少しずれた眼鏡を押し上げる。 そんな何気無い仕草も貴方がするとトキメク材料になるんですね。 絶望の宣告から数週間。 病は確実に貴方の体を蝕みつつあった。 みるみる落ちた視力 ほぼ毎日綺麗な顔を歪ます頭痛 見るからに濃い物を好みだした味覚。 日に日に僕の中で降り積もる不安。 気付かれたくなくて外してしまう視線。 あんなに貴方の瞳に恋してたのに 今は真っ直ぐ見つめ返すのに戸惑う。 こんなに愛しいのに・・・

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